デジタルとアナログとカラーと白黒
TV画面の右上に出る『アナログ』の文字が
はらたつ。というのは
旧式TVのみんなが思っていること。
放送している側から言えば。
『あのお、そちらの受信機はアナログですよう。
お知らせさせてくださいねえ』
というつもりなんだろうが、
うるせえよ。
かつての、放送技術の大革新、
白黒からカラーへの時期には、
こんないやみな放送はなかったよなあ。
いや、通知は山ほどあった。
新聞のTV欄ではカラー放送が『カラー』と自慢げに書かれていた。
教育TVとか東京12チャンネルとか
ずいぶん長いこと白黒だったからね。
しかし、あのころ
カラー放送は白黒TVでも受信できた。
もちろんそのままなら、
画面は白黒なんだけど、
画像はちゃんと映る。
来年デジタル放送になると、
アナログの受信機では映像も映らなくなる
というのが実に腹が立つ。
むかしは『白黒TV』で
カラー映像を見る方法とかあったのに。
このことを詳しく書いているのは
伊丹十三さんの『色即是空』という
抱腹絶倒なエッセイ。
ぜひ読んでくださいといいたいのだが
絶版だ。
だから最小限をご紹介する。
文字通り、『色』に憑かれた人の話で
戦争中、鹵獲した米軍のカラー映画に感動し
戦後は『白黒フィルムでカラー映像をとる方法』に
熱中した。
しばらくしてカラーフィルムが出回ると
憑きが落ちる。
復活したのは
TVのカラー放送が始まってから。
『で、当時『オリンピックをカラーで見よう』
なんてことがあったじゃないの?
-ってのはオリンピックのころ三十万よね。
カラーテレビってのは。・・・
ちょうどその頃、モノクロのカラーテレビでカラー放送を
見る機械ってのを売り出した人がいたんだなァ。
・・・で、行ったらさ、すごい田舎なんだよ、
狛江なんてとこはさ、ネ?
・・・ま、ともかくさ、そのお爺さんから買ったわけ
カラーの機械をさ-え?一万いくらだったかなあ、
まあ、俺の給料が四万円くらいの時分だからさ、
安くはないやねえ-』
簡単に言うと、赤青黄のセロファンを
めがねの前で回す、というもの。
何故それでカラーなのか?
ほんとに見えるのか?というのは
エッセーを読んでください。
とにかくそうして手に入れた、
『モノクロをカラーで見る機械』は
ちゃんと機能したのだが、
残念ながら一人用だった。
これでは逆に家庭不和になる。
ということで
必然的に大きくすることを試みて
そこで彼の情熱は燃え上がる。
その試行錯誤が実にわらえる。のだが
書きません。
苦労のあげく、当時の大イベント、
東京オリンピックを夫婦でカラーで見ることに
成功するのだが、
苦労して製作した『家庭用カラーTV』が
びゅんびゅんと見る人に向けて風を起こすのであった。
『オリンピック?見たよォ。見ましたよ。カラーでねェ。・・・
-こらね、もうねえ、ものすごい優越感よ。
ネ?ちゃんと色がついてるんだからねェ。
オリンピックの開会式でさ、
・・あんまり風がないときなんてのはさ、
もう青空に日の丸よ。
だからさ、もう、女房と手を取り合ってさ、
「ソノママ!ソノママ!」って叫びながらさ、
もう、見るわけ。
見ながら、もうなんちゅうだろうねえ、
ボロボロ泣くわけよ、ネ?
もう、ボロボロ泣くのよ。
・・・感動もあるけどさ目もずいぶん疲れているわけよ。
・・・女房も俺も、目を真っ赤に充血させて、
それでもテレビの前から離れないんだからねえ。』
私のつたない文章では
ちっともおもしろさが伝わらないと思うので、
ぜひ、原文に当たってください。
昭和48年文芸春秋刊『小説より奇なり』です。
私は、文庫で買って
酔っぱらって、かばんごとなくして、
Amazonでまた買いました。
ぜひ。
だから、デジタルはどうやって見たらいいんだろう。
セロファンじゃだめなんだろうな?
あのほら、3Dに見えるめがねか?
赤外線のめがねか?
技術がしろうとの手の届かない時代になってしまって、かなしい。
『今日の一枚』
酔ってなお天晴れな馬鹿。
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