一級建築士製図試験物語 (受験申し込み)
さて、製図試験に落ちた私は
翌年の7月、受験申し込みのために
建築士会の講堂で並んでいた。
いまはインターネットでも申し込めるが、
昔は所定の受付会場に行くしかなかった。
そしてこれが毎年、
どえらい並ばされる。
受付期間が短く、申込者が多いせいだが
一番の理由は申込書が恐ろしくめんどくさいからだ。
今はどうか知らないが、
学歴、職歴、2級建築士を持っている人は
取得した年、
大学院を出た人はなにを研究しておったか、
そして設計、監理の実務経歴。
実務経歴は物件名称まで書かされ
具体的になにをしたかも書け、とくる。
あまりにめんどくさい書類なので
遺漏がないかチェックする人がいて
この人のサインをもらわねば提出できない。
だから列ができる。
受験資格がややこしいので、確認するためらしいのだが、
半日仕事である。
いや申込書を家で書いてくれば
もっと早く済むんですけどね。
さて、この受験申し込み、
学科試験から受ける人も
学科に合格していて製図だけ受ける人も
同じ会場だった。
それは仕方ないかな、と思うのだが
申込書の色が違うのがなんとも嫌だった。
学科からの人は赤
製図だけの人は青だったのだ。
不合格が重なると
申込書の赤いのが恥ずかしい。
そして、地元で申し込むと
不思議と知り合いに会うから困ってしまう。
そして彼が青い申込書を持っていたりすると
物言いが卑屈になる。
『よう』
『ああ、お前も?』
『うん、去年製図でしくじって』
『あああ、そう』
アパルトヘイトとは
かようなものだったのか?
いや、ぜんぜん違うし
南アフリカの人に怒られそうだ。
しかし、今年の私は違う。
手にしているのは
あこがれの青い申込書である。
『控えおろう』という気分である。
いや、青い申込書を持っている時点で
ものすごく間違えている。
製図落ちてるわけだし。
『あこがれの』ってのも大馬鹿だ。
カド番だし。
しかしこういう
地道なステップアップって
大事じゃないだろうか?
いやごめん、言い過ぎました。
さて、そういうドラマを含みつつ列が進むと
チェックする人がいる。
この役は建築士会のお姉ちゃんとかではなく
建築主事クラスの人がやるらしく、
某市の建築指導課などで
よく見かけるひとなどがいたりする。
『この法律はこう解釈するんじゃないですか?』
などと、私が役所でえらそうに噛み付いていた人だ。
『こいつ、あんなに偉そうに吹いてたのに
一級もってないんかい』
うわあ、あの人には当たりませんように。
と思うと、あたるんだよな。
その人は、私の顔など目もくれず
無言でサインして書類を返してくれた。
『来年はこんなとこに来んとこ』と
また、あほの子のような誓いを
新たにするのでした。
次回予告
『恥ずかしんいやったら、勉強せんかい』
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