一級建築士製図試験物語(見えてしまったもの)
5時間30分におよぶ製図試験が始まった。
5時間30分でもしんどかったのに、
今年からは6時間30分だそうです。
うへえ。
時間配分をせねばならない。
確か私の年は図面4枚と面積計算表、
設計要旨を書けというものだった。
清書に3時間は欲しいところだ。
前半の2時間30分で、
問題を読んで下書きをせねばならない。
問題文はA3の用紙に
くそ細かい字で
みっちり書かれていて、
なにしろ『落とすための試験』だから
さまざまなトラップが仕掛けられている。
もう、初めての海外旅行が
一人旅でアフガニスタンなんですよぉ。
という、女子短大生くらい用心していい。
っていうか、そんな国行くなよ。
しかしまあ、
そうも言っていられないので、
下書き用紙に
敷地など写す。
そして、建物の配置を考えるのだが
ここで例の『禿の先生の7mスパン』が
実に役に立った。
建物のスパンを自由に決めてよく、さらに
モジュールなんてのを、
考えだしていたら
3日考えても何も描けなかっただろう。
『7mスパンを変えねえぞ』と
決めてしまう無駄に強い心が大事です。
『あと500寄せたら』とか考えてはいけません。
きりがないし、
悩んだところで点数に差がつくほど
いいプランにはならないからです。
『あの禿が、言ってたんだからしょうがない』と
あきらめることも大事、だと思います。
試験が始まると、
教室は実に静かだ。
しかし、試験開始1時間くらいすると、
かしょかしょかしょかしょ
シャープペンシルの音がする。
なに?と、思わず音の方向を見ると
私の、左斜め前の少年だ。
いや、少年、としか言いようがないくらい、若い。
そうして、彼は
製図台の上に、清書用紙を置いて
熱心になにやら書き込んでいる。
この時間に清書を始めるとは!
ものすごく優秀なやつがいるもんだ!
と、思わずのぞきこんでしまった。
だから、見えるんだってば。
しかし、
彼の答案には
まだ、配置図と思しき図面のアウトラインが
1/4ほど描かれているだけで、
彼は机に突っ伏すようにして
まだ完成していない
その壁と柱を一生懸命にシャーペンで塗っていた。
は?
壁と柱を黒く塗る?
もちろん、課題にはそんなことをしろという
指示は一切ない。
って言うか、そんな手間なこと
頼まれても誰もしない。
壁と柱を黒く塗る?
ひまな計画図ならそういうこともするけど
これは試験だぞ!
あの試験から十年以上経った今でも
真相はわからないのだが
想像すれば、
彼は、いぢわるな先輩に
『一級の試験なんてのは、
図面の見栄えで決まるんだ。』とかなんとか
言われてきたんだろう。
そして、彼なりに
見栄えをよくする方法として
躯体を黒く塗る,という手段を選んだのだ。
もちろん、
鉛筆の粉だらけの彼の図面は
当人だけでなく
ほかの人の図面を真っ黒に汚すので
迷惑極まりない。
私が採点担当者なら
真っ先にゴミ箱に捨てるだろう。
じつは、もうひとり、
すばらしい受験生がいて
そっちのほうが真打なのだが
今日の分で、
すごく長文になってしまいました。
もとがWordの文章だから
HTMLにするのが
手間なんです。
関係ないですね。
すいません。
次回予告
『そういうことは学校でやってくれ』
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コメント
;:゙;`(゚∀゚)`;:゙わくわく。次も楽しみ
投稿: 六郎 | 2009年9月 7日 (月) 22時46分
もうひとりのすばらしい受験生は
次回に登場するのですね。
『一級…物語』読み進んじゃいますね。
投稿: つおい虎 | 2009年9月 7日 (月) 23時40分
六郎さん、つおい虎さん
ありがとうございます。
更新してからこのコメントを書いてます。
ご期待に添えたでしょうか?
すごく不安です。
また感想など寄せてくださると
励みになります。
ありがとうございます。
投稿: natsu | 2009年9月 8日 (火) 20時54分