どんたくと屋台と三和銀行と僕
10年前の5月3日、私は博多にいた。
一人で、車に乗って旅行にきていた。
GWだし、どんたくだ。
博多の街は大変な人出である。
JRの駅前に人だかりができているので
何かと思ったら号外が配られていた。
西鉄バスジャック事件である。
そんな騒がしい街で、私は銀行を探していた。
手持ちの現金が心許なくなってきたのだ。
5月3日、祝日である。
いまからかんがえると、
とても、ほんの10年前のことと思えないのだが、
コンビニでどこの銀行のカードも使える、ということはなく
お財布ケータイなどというものもなく
私の口座があった銀行は、三和銀行だった。
当時、土日はともかく
祝日でも銀行カードが使えるのは
それを発行した銀行の店舗だけだ。
ということを思い知らされたのは
見慣れない名前の銀行をいくら回っても
『このカードはお取り扱いできません』と
ATMにつき返された後。
旅先にたくさんの現金を持っていくと
間違いなく余計に使ってしまう。
しかし あふれるほど屋台が出ているお祭りの中で
金を持っていないのは真剣にみじめだ。
こういった事情で三和銀行を探していた。
さすがに九州最大の街で大きな支店がある。
シャッターが下りている。
祝日だから当然なのだが、
ATMは、やっているはずだ。
東京まで電話して確かめたのだ。
しかし、入り口がない。
銀行の前には隙間なく屋台が並んでいて
フランクフルトなど焼いている。
はらが減るが金はない。
何よりここでお金が下ろせなければ
5月6日まで福岡を動けない。
一応、社会人としてそれは避けたい。
困ったと思いながら眺めていると
屋台のプロパンガスのボンベの横をすり抜けて
人が出てくる。
最初は屋台の人かと思っていたのだが
見ていると、どうも違う。
違う人が何人も出入りしている。
屋台のおばちゃんに訊けば早いのだが
フランクフルトを買うそぶりもなく、
何十分も周りをうろついているだけの私には
無表情なのが、怖い。
しかし、見ていても仕方ないので
勇を鼓してボンベをすり抜けてみると
屋台のテントとシャッターの間に
人がすれ違えないくらいの細い隙間がある。
そうして、その先に
ATMコーナーへの小さな入り口があったのでした。
わかんねえよっ
ATMコーナーの案内をきちんと出していない
三和銀行もどうかと思うが
いくら祭りだからって
それをふさいじゃう屋台もどうだろう?
上海万博を笑えないと思う。
5月3日がくるたびに、
あの頃の情けない自分とともに想い出すのでした。
では『今日の一枚』
いやな薬局
NO FAKES
赤十字に登録商標マークがついている時点で、
絶対うそ。
左下にあるセブンイレブンも怪しく見える。
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コメント
めっちゃ笑ってしまいました❤
神戸にお住まいなのですね。
ご近所さんということで。
また遊びにきます♪
投稿: fullpot | 2010年5月 4日 (火) 00時56分
博多への一人旅で
貴重な体験をされたのですね
銀行は今は少しは親切でしょうか
屋台のおばちゃん
無表情でしたか
こわいですね
写真
ウソやらパクリやら
すごすぎですね
笑えます
投稿: レイ | 2010年5月 4日 (火) 10時22分
fullpotさんありがとうございます。
ご近所さんですか。
こちらこそよろしくお願いします。
レイさんありがとうございます。
いまはコンビニで、
お金が下ろせますからねえ。
この看板はどこなんだろう、と思います。
投稿: natsu | 2010年5月 5日 (水) 16時32分