電気バイクと、第2エネルギー革命
ヤマハが『電動原付』を発売した。
このCMの恐るべき所は、
松下奈緒のヘルメット姿を出していないところ。
ちゃんと『原付』だって言えよ。
バイクが売れない、という話は以前にも書いた。
ヤマハ、ホンダ、カワサキ、スズキと
世界を圧した日本のバイクメーカーも、
もはや国内ではまったく商売にならないらしい。
『原付』の役割は、『電動サポートチャリ』に取って代わられた。
そこで今回ヤマハが発売したのが『電動原付』。
このバイクがすばらしいところは
『家庭用コンセント』で充電できるところ。
『ガス欠』ならぬ『電欠』になっても
自動販売機のコンセントで充電できるから大丈夫だ。
(犯罪です。)
でも、『原付』なのでメットをかぶらなきゃいけないし免許もいる。
そもそも、この古くさいデザインはなんだ?
だから、このバイクは100%売れないだろうと思うのだが
それならもう、
バイクというものはなくなってしまうのだろうか?
そして、なにより
ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、
というものは、なくなってしまうのだろうか。
今回の『電動バイク』もそうだが
『電気自動車』というものも、普通になってきた。
電気自動車というものを作るのは、さほどむずかしくない。
ガソリン自動車を、エンジンブロックから作ろうと思ったら
素人にはとてもじゃないが無理なのだが、
電気自動車なら大学の自動車部くらいの知識と設備があれば、
『それらしいもの』は作れる。
ガソリンが統制品だった時代
日本にもあった電気自動車
『たま自動車』
そして、内燃機関の車をなくそうと思ったらじつは簡単だ。
ガソリンスタンドをなくしてしまえばいい。
また、エキセントリックなこと言いだしよったぞ、こいつ
と思わずに、最後まで訊いて下さい。
1960年代、『エネルギー革命』というものがあった。
『石炭をやめてしまえ』というものだ。
かつて日本は、世界一の産炭国だった。
いまでも、北海道や九州にはたくさん石炭が埋まっているのだが
掘ろうと思ったら、落盤事故を起こしたチリの銅山以上に
深く掘らないといけないので、止めてしまった。
使う方でも、鉄道は、蒸気機関車が主力だったが
そんなもの やめちまえ、と。
ガキの頃、まだ石炭ストーブというのをよく見たが
それも やめちまえ、と。
深く掘らないといけない国内炭は
値段が高くて輸出競争力がないので
国内で引き取らないといけない。
逆に1960年代、石油はいまよりずっと安かった。
石油のほうが熱効率もいいし値段も安いぞ、と
だから石炭なんか やめちまえ、と。
自発的に変わっていった部分もあるが、国策でもあった。
もちろん、スムーズには行かない。
炭鉱というのは巨大産業で、従事する人も多かった。
当然、労働側の抵抗は激しかった。
最大の労働争議は1959年の三井三池炭鉱スト。
絶頂期の総評が、延べ30万人以上を動員するという
1年以上の大騒動になったのだが、結局労組が負けた。
これ以降、労働運動は社会の支持を失って変質していく。
そして、度重なる労働争議に懲りて
『資本』である三井が炭鉱を見捨てた、
ということも大きかった。
まだ他で食える、財閥系の『三井』はともかく
炭鉱以外で食えない北炭なんかは、最新鋭の安全設備を備えた
『夕張新鉱』をつくって『ちょっと高いけど高品質』という
国内炭を供給しようとしたが、
1981年に死者93人を出す、ガス噴出事故を起こした。
これがとどめとなって、北炭ばかりか、
日本の炭鉱がすべて滅んだ。
すべて閉山したおかげで夕張なんかは人口が10分の1に
なってしまった。
乱暴な話である。
いまの日本ではエネルギーのうち
石炭は2割しかなく、さらにその半分は製鉄用だ。
(資源エネルギー庁HPから クリックで大きくなります。)
結局『エネルギー革命』は成功した。
原油の輸入自由化が1962年。
石油ショックで日本中が慌てたのが1973年だから
ほぼ10年で『石炭から石油へ』を転換してしまったわけだ。
乱暴な話だなあ。
そして、同じことが
石油でも、起きないとは限らない。
日本は石油の99%を輸入していて、さらにその大半を
中東から輸入している。
そして、石油のうち35%が
車をはじめとする輸送用燃料だ。
(船や飛行機の燃料も含むけど)
これを無くせたら、でかいぞ。
イランの核開発も、ソマリア沖の海賊も、
インドや中国が空母を持っても、もう怖くない。
石油ショックでトイレットペーパーを買いに走ることもない。
なんで石油と便所紙が関係があったんだろう。
石油で走る車なんか、やめられないか?
と、然るべき人が考えていても、おかしくない。
だから、電池の技術が こなれてきたら
一気に『石油をやめる。』ということは充分にあり得る。
もちろん、自動車産業は
かつての石炭産業以上の巨大産業だから
いきなり『エンジンをやめる』とは言わないだろうが
国内では、もう売れない。
海外ではガソリン車もディーゼル車も
需要があるんだからいいじゃん、
それに貨物車両はしばらくは変えられないんだし、
と、メーカーに因果を含めて、
国内ではみんな電気自動車
という時代が来るかもしれない。
『あら、おたくの車、ガソリン?』
『ええ、これだけは手放せませんでね。』
『でも、どこで給油を?』
『諏訪山に古くからのスタンドがありましてね。
月に一度入れに行くんです。
旧車マニアが集まってきて、
その日は同窓会のようになってしまいますがなあ。』
『おや、ここも自動販売機がなくなってしまいましたか。』
『盗電のせいでしょう。
駐車するふりをして充電しちまう、どろぼうが
後を絶たないらしいですよ。』
『プラグの形を変えちまえばいいんじゃないですかねえ。』
『いやあ、いま○ートバックスとかにいくと
「マルチプラグ」っていうのを売ってますよ。』
『…ほう。』
『すすす、すいません。JAFですかっ?』
『はいはい。』
『えええ、えーとガス欠、じゃない『電欠』なんです。』
『あーじゃあ、すぐ行きます。
あーでも、いま混んでるから2時間くらい掛かりますよ。』
『…ええー? 』
『お急ぎだったら
最近の車には「自家充電装置」がついていますよ。』
『そんなのがあるんですか?』
『附属工具に自転車がありませんか?』
『あー、これ。前から不思議だったんです。』
『それをプラグにつないで、しばらくこいでみて下さい。』
『充電できるんですか?』
『ええ、一時間こいだら50m分くらいには…』
『2時間待ちます…』
では『今日の二枚。』
フィリピンの刑務所
拷問、のように見えるが
チャリンコを回して扇風機を回そう、というアトラクション
これも、同じ刑務所。
笑うとストレスが発散できるよ、という
アトラクション。
刑務官が一緒なのがいやだ。
それと、この国は服役囚の顔が出ても構わないのかね。
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コメント
今回の話も勉強になりました
ありがとうございます
脱石油で 日本が頑張って欲しいです
最後の写真
顔写ってますね
気にしないお国柄?
ちょっとコワイです
投稿: レイ | 2010年10月17日 (日) 17時59分
乱暴なことを決意することを英断。した人を英雄と呼びます。
乱暴は、暴力的な美学或いは悪意です。
生禿的には、好きにはなれません。
炭坑は元々は国有の事業だった。それを財閥(政商)が貰い受けた。炭坑閉山は、政策に乗りやすい構造を最初から持っていたようです。
投稿: 生禿 | 2010年10月17日 (日) 22時11分
レイさんありがとうございます。
まさか生きているうちに
電気バイクや電気自動車を見る時代に
なるとは思わなかったんですが
どうやら、日本は本気らしいです。
服役囚に、こんなアトラクションをやらせる
なんて、日本じゃあ
考えられないですよねえ。
生禿さんありがとうございます。
『石炭産業』って本当に
国策に振り回された世界です。
1950年代まで『傾斜生産』で
保護しまくっていたんですから。
それが10年でエネルギーを転換して
すぐに石油ショックで慌てふためく。
スリーマイルやチェルノブイリを見て
『脱原発』をいいだし、
地球温暖化で『原発回帰』です。
もう、ねえ。
投稿: natsu | 2010年10月20日 (水) 22時24分