バレンタイン・ラプソディ
『おかえりなさーい。はい、これチョコよ。』
『あー、疲れた。』
『あら、なにこれ?』
『あああ、会社の事務の娘に貰ったチョコだよ。
義理だよ、義理。』
『ああら、ゴディバじゃない。
義理チョコに「ごぢば」!
昔あたしが上げたチョコはアポロチョコだったのに。』
『違うんだ、サマンサ。訊いてくれ。
もちろん、君のチョコの方がおいしかったよ。』
『そりゃそうでしょ。
チェリーボーイだった あんたは、あんなに喜んでたんだから。
ぼくはピンクの所、君には茶色いところをあげよう、
なんて言って一緒に食べたくせに。
両端から食べよう、なんて言ってくれたくせにっ。』
『いや、そうなんだけど
中途半端に細かいディテールを言わないでくれ。』
『…ぶー…』
『じゃあじゃあじゃあ、今度の休みには
好きなところに連れて行ってあげよう。
映画に行こう、な?
「北斗の拳・3D」ってのを見にいこうっ。』
『……』
『ケンシロウが「あたたたたたたた」ってやった時の
迫力は、3Dだから そりゃもう「ひでぶ」ってなもんで
川田君なんか白目をむいちゃって
「お前はもう死んでいる」ってなもんで…』
『誰よ、それ…』
『あ…』
『ごぢばの娘ねっ。』
『あ゛…』
『まったく、チョコくれるのはいいけど
どの娘も、みんなウィスキーボンボンだぜ…』
『なんだよう、つよし。チョコ貰えるだけいいじゃないかあ。』
『妙に重たい包みだな、と思ったら、カットガラスの灰皿に、
てんこもりの「テキーラ・ボンボン」だぜっ。』
『…あーこれ、お前あてじゃないよ。
「エビ様に」って書いてある。』
『くそっ。ぐれてやるっ。
公園で裸になってやるっ。』
『もえー、チョコ渡すんなら直接渡したらいいじゃない。』
『なに言ってんの?
下駄箱を開けたら、チョコと手紙が入ってる。
これが青春よっ。』
『えー、でも恥ずかしいじゃない?』
『馬鹿っ。下駄箱を開けたらチョコや手紙がてんこもりなんて
高校生の時にしかできないのよっ。』
『あー、靴を履き替えるなんていうのは、高校までよねえ…』
『大人になるとね?そういうことが、うらやましくって、
あの時やっておけばよかったと、…』
『…あの時?』
『本当に、もう下駄箱を開けたら
だーっていって、プレゼントが流れ出す
そういうのは、もう青春の夢だと。歳をとったら
つくづくつくづくつくづく、と。』
『…あの、ときどき中途半端にシチュエーションに
リアリティを入れるのはやめてくんないかなあ。』
『さあっ、ここが先輩の下駄箱よっ。』
『…おおう。
鼻よりも眼に来るわね…』
『…百年の恋も冷めるわ。』
『男子高校生なんてこんなもんよね…』
『だいじょうぶっ。
このチョコはオドイーター入りよっ。』
『やあ、よろしく頼むよ。』
『うしゃしゃしゃしゃ。山田さんが来てくれてうれしいよ。』
『農業だけじゃ食えなくてね。
近所にチョコレート工場ができて、助かるよ。』
『食品工場だからね。
いろいろ うるさい決まりがあるんだよ。』
『ああ、田中さん、是非教えてくれ。』
『まずね、着替えておくれよ。
工場の中では、この作業服さ。
靴も替えとくれ。あんたの靴箱はここさ。』
『…おや、下駄箱に何か入っている。
あんた、これは、田中さんっ?』
『うしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃ。』
では『今日のバレンタイン』
アポロチョコ
今でも人気商品。
バレンタイン・キッス
これは『渡り廊下走り隊』のカバーバージョン
プロデュースは秋元康。
柳の下に定置網。
| 固定リンク
« ケータイの力 | トップページ | イエスか、ノーか »
「やる気があるやつだけついてきな」カテゴリの記事
- 俺たちの明日はどっちだ。(2012.05.23)
- バレンタイン・ラプソディ 2012(2012.02.10)
- 百尺規制をやめてくれ(2012.01.29)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
今回も爆笑でした
ありがとうございます
灰皿の
「テキーラボンボン」
natsuさんの発想力に脱帽です
今度どこかで使ってみ・・・
投稿: レイ | 2011年2月14日 (月) 22時50分
面白い情報ですね、興味があります
投稿: 同人誌 | 2011年2月16日 (水) 10時28分
レイさんありがとうございます。
いや、怒られると思うんで
そろそろやめようと思ってるんですが。
なんでこう、くだらないことばっかり
涌いて出てくるのか…
同人誌さんありがとうございます。
投稿: natsu | 2011年2月20日 (日) 15時17分