クールビズで困る人たち
『ねえ、明日から衣替えよ。
あんたんとこの会社もクールビズでしょ?』
『なに着ていくの?』
『ワイシャツでいいだろ?
ネクタイしなきゃいいんだし…』
『駄目よっ。』
『アロハにサンダルの、高木ブースタイルで行けっていうのか?』
『違うわよ。
なんでもいいって言うのは、要するに私服でしょう。
へんな格好で行ったら、女性社員に
「うわっ、ださっ。」っていわれるわよ。』
『いいよ、別に…』
『違うっていってんでしょ。
あんたが笑われるのは構わないけど、
「課長の奥さん、だっさいわねー。」とか
「夫婦仲悪いんじゃない?」とか
言われるにきまってんのよっ。』
日本各地で、そんな会話が行われてるであろう、
今日この頃、最近は少し涼しいな。
ワイシャツとネクタイっていうのは
サラリーマンの制服だと思う。
制服がありがたいのは、
服装を考えなくていいところだ。
就職した時、とりあえずワイシャツ6着とネクタイ6本を買った。
ウィークデーは洗濯なんかしない。
週末にまとめてやるから、そういう数になる。
週一回登板、というヘビーローテーションだ。
バブルにさしかかる時代で、
ビジネススーツにも、ずいぶんな金をかける奴が
出始めた頃だったから貧乏くさい話だが、
それでいいと思う。
出身校に制服がなかった。
『生徒の自主性を重んじる』のだそうだ。
いまでは珍しくない話かも知れないが、70年代だ。
学生運動が、まだ元気な頃だったから、いちびった話である。
しかし、学生どもは、そんなありがたい理念なんか
知ったこっちゃなくて
私も含めて、男はみんな白ワイシャツに学ラン
女子は、色こそ それぞれだったが
みんなブラウスにスカートだった。
男に関しては、間違いなく親が楽をしたかったからだと思う。
少なくとも、うちはそうだった。
女の子のほうも実は大変で
『色が自由になるから、毎日着替えなきゃいけないわけ。
男子は、ずーっと学ランでもいいけど、
女はそうもいかないの。
そのくせ、ブラウスは襟がなきゃ駄目だの
袖がなきゃ駄目だの、スカートの丈はどうだの、
もううるさくってさあ。』
だったそうである。
『高校いったら、制服があるから楽よお』
だったそうである。
そうか、私服のくせに、
いやにみんな野暮ったい服だと思ってはいたが、
そういう理由だったのか…
だから、『スーパークールビズ』で
『アロハでいいよ。』といわれても、
アロハなんか着ていく奴は、多分いない。
社員旅行で、上司の私服を見たら、
がっかりするだろう。
下手にアロハなんか着ていったら
秋になっても『アロハ課長』と呼ばれてしまう。
次の年、出世したら『アロハ次長』だ。
『えーと、弊社を希望された理由は?』
『はい、御社の進取にあふれた気風と
会社訪問で実感した自由闊達な雰囲気に惹かれましたっ。』
『…それで、面接にアロハ、と…』
『…駄目でしょうか?…』
『しかもビーサンかよ。』
『いやっ。けっして馬鹿にするつもりでは…
地球にも優しく、被災地域との連帯を表現するつもりで。
それになにより、こういう服なら、自分を自由に表現できる、と。』
『あのな、クールビズっていうのは
いま、一番没個性的なんだよ…』
6月から、役所はどう変わるんだろう。
ステテコ姿で書類出しに行ってやろうか。
では、『今日の二枚。』
『報道の自由なくして、民主主義なし。』
わりと真面目なイベントのポスター。
これと、ペアになっている。
『作られた報道者たち。』という事だろうか?
寓意が難しすぎて、どうもよくわからない。
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