休耕田で電力王
これからはメガソーラー発電だ、というニュース。
『百億円おじさんが、あれこれ言っていますね。』
『いま、手を挙げている連中は
おこぼれにあずかろうとしている連中だけだ。』
『またそんな、喧嘩売るような事を…』
『「関西広域連合メガ・ソーラー」って
どう見ても暴走族の名前だよな。』
『耕作放棄地にソーラーパネルをおいて
「休耕田で電力王」っていうプランも言っているらしいです。』
『でも、ソーラー発電自体は悪い事じゃないでしょう。』
『うん、いいんだけど。
「メガ」である必然性がわからないんだよ。』
『大きい事はいい事でしょう。
山本直純もいってます。』
『このCMは、いまの人には、さすがに通じないと思うぞ。』
『…はあ。』
『ソーラー発電のいいところは
「電気を使うところで発電が出来る」
って事だと思うんだけどなあ。』
『東京で使う電気を福島で作ったりしてますよね。』
『事故を起こした福島第1原発は470万Kwもある。
黒部ダムの発電量の14倍だ。』
かっこいい黒四ダム
『原子炉1つでも、ダム2基分以上ですね。』
『そんだけ、でかくしなきゃいけない理由は
今回の事故でわかったように、原発は危ないから
引き受け手がいないせいもある。』
『はあ…』
『でも、それ以上に
送電するためには、発電所自体を
大きくしなきゃいけないためでもあるんだ。』
『どういう事です?』
『遠距離の送電ってのは
超高電圧にしないと効率が悪いんだよ。』
『街中にも高圧鉄塔がありますね。』
『あれは百万ボルトとかあるからな。』
『それも、地上に降りた最後のコンセントでは
たった100ボルトなんですよねえ。』
『発電所から100ボルトで送ったら途中でなくなっちまう。
そこまで苦労して超高電圧にしても、
福島から東京に送ったら、3割以上減ってしまう。』
『そんだけ、ロスがあっても「原発は経済的」
だったんですよね?』
『ダムなんかすぐには出来ないし、場所もない。
火力の新設を頑張っているらしいが、
鳩に言われるまでもなく、温暖化で将来的には増やせない。
地熱も風力も街中では出来ないから、
やっぱり送電ロスが出る。』
『マンションに風力発電機をつけたら
騒音で近所から苦情が来たらしいです。』
『ソーラーは、唯一
オンデマンドな発電が可能なんだけどな』
『…そしたら田舎の「休耕田で電力王」ってのは
無意味なんですか?』
『ソーラーパネルの効率なんて、一番いい奴で18%くらいだ。
それも天候や時間で制限される。』
『それは、計算に織り込んでいるでしょう。』
『それに劣化する。』
『それも、大分改良されてますよ。』
『じゃあ、誰もしていない話をしようか?』
『はあ…』
『汚れるだろ?』
『え?そこ?』
『真面目な話だ。
街中は空気が悪いから、
保守率は下手すれば7割台だ。』
『休耕田なら田舎だし、空気がいいし…』
『地上においたら埃がつくだろ?
住宅の屋根のソーラーパネルの掃除をする奴がいるか?』
『屋根の上になんか、素人さんは登りません。』
『地上にあっても、メガソーラーだったら誰が掃除する?』
『はあ…』
『しかも勾配屋根っていうのは、凄く汚れるんだ。
瓦でもなんでも屋根ってみんな、濃い色がついているだろう。』
『そういえば、ソーラーパネルって傾けて設置しますもんねえ。』
『地球なんて、夏と冬とで50°近くも傾きが違う。
東京の北緯36°、札幌に至っては北緯43°だなんて、
発電することでいえば北の果てだ。
冬には、傾けないと話にならん。』
『でも傾けたら、大気の影響でエネルギーが減りますよね。』
『夕日が赤いのは、太陽光が斜めに通ると
空気中の塵で、青い光が奪われちまうからだ。
受照面が傾いていたら効率は落ちる。』
『でも、今、世の中は「ソーラー万歳」ですよ?』
『それがいやなんだよっ。
そして、
勾配屋根は汚れてしかたないって事を
言わねえんだよ、誰もっ。』
『でもでもでもでも、四国電力は
すでにメガソーラー計画をたててますっ。』
『アホか。あれは、発電所の横に建てるから
既設の変電設備が使えるっていうだけの事だろうっ。』
『……』
『田舎の耕作放棄地に効率の悪いソーラーパネルを建てて
さらにそれの保守率なんかいい加減だ。』
『でもでもでもでも、』
『そのうえ、ソーラー発電なんて
直流の低圧しか作れないんだ。
休耕田に分散して作って、
それを集めて変電所を通して、高圧線で送るって、
リアリティあるか?』
『さっきから気になってるんですけど
直流で低圧だったらなにがいけないんです?
ソーラーパネルはそういうものなんだから
しかたないでしょう。』
『エジソンの電流裁判というのを知っているか?』
『エジソンって、発明王…?』
『このおっさんは、発明王で偉大な人物なんだけど
恐ろしく我が強かった。
自分の発明や製品の商売敵に対して
ものすごく厳しかった。』
『…子供向けの伝記物語のイメージと違いますね…』
『有名なのが、送電方式での「交直流問題」だ。
エジソンは、直流を主張したのに対して
弟子のニコラ・テスラなんかは
「せんせー、やっぱり交流でっせ。」と諌言した。』
『助言があったのに聞かなかった?』
『でもな、この「発明王」は
刃向かう弟子に対しては厳しかった。
交流一派が別会社を作って
テスラもそこに移ると、腹を立てて訴訟を起こした。』
『発明王が、ですか?』
『こういうことは、もっと
ガキども向けの伝記に書くべきだと思うんだけどな。』
『エジソンは勝ったんですか?』
『メリケンは陪審制だからな。
さすがに「発明王」の言う事にはみんな従った。』
『なるほど。』
『しかも、こいつは、「いかに交流が危険か」
と言う事を宣伝するために、
電気椅子を作って見せたりもした。』
『うわあ…』
『でもな、裁判には勝ったが、
結果として市場からは駆逐された。
説明が長くなるからやめるが
直流は、電圧を上げ下げするのがめんどくさいんだ。
交流は、コンバーターひとつで出来る。』
『えーと、メガソーラーは効率が悪いし
消費地から離れていたら、
高圧にするための変電所や送電設備が必要で
しかもロスがある、と。』
『ソーラー発電に意味があるとしたら
「メガ」にして送電するよりも、
消費地で生産できるっていう事だと思うんだ。』
『小回りのきく発電、っていう事で…』
『そうじゃなければ、こんなに空気の悪いところで
効率の悪い「太陽光発電」なんて意味がない。』
『それならどうしたらいいんです?
あなた、文句を言うばかりでしょう?』
『いやあ…』
『ちょっとは建設的な事を言ったらどうです?』
『あのさ、「百億円おじさん」に対しても
別に、言葉の裏がどうこうということ言うつもりはなくて、
世の中がみんな、「自然エネルギー万歳」みたいな
雰囲気になっているのが、いやなんだよ。』
『へそ曲がりですねー。』
『だって、そうだろう?
誰か、世の中を斜め下から
見上げる人間がいないと駄目だぞ。』
『つまり、使命感だと?』
『いや、単に面白いから。』
『それはともかく、どうしてもメガソーラーが
やりたいんだったら、宇宙太陽光発電しかないな。』
『また、すっとんきょうな事を…』
『馬鹿野郎っ。
これは、1960年代から研究されていて、
技術的にはもう可能なんだっ。』
『太陽電池パネルを浮かべた衛星を打ち上げるんですね?』
1990年代の計画図
『しかも、軌道を選べば
季節や時間に関係なく太陽の光が浴びられる。』
『そのうえ、曇りも雨もない、と。』
『さらに、いくらでもでかくする事が出来て、埃もつかない。』
『でも、そのエネルギーをどうやって地上に送るんです?
送電がややこしいのは原発以上でしょう。』
『ふふふ、それも解決済みだ。』
『だから、どうやって…』
『マイクロ波で送る。』
『マイクロ波?』
『電子レンジのあれだよ。』
『そんなので送電したら、地上の人が焼けちゃうでしょう。』
『ふふふ、そこは、ほら、調節して…』
『ああ、「ちょっと、温かいかなー」っていうくらいにして。』
『あっ。お前、馬鹿にしてるだろうっ。』
『だって、だって、だって…』
『マイクロ波によるエネルギー送信っていうのは
今でも研究が行われている。
そもそも、日本は、この分野では世界一なんだぞ。』
『…世界一?』
『戦争中に陸軍が「殺人電波兵器」ってのを研究した。』
『それと、これとを一緒にしたら
今の研究者の人に怒られませんか?』
『とにかく陸軍は、当時、日本だけが持っていた
マグネトロンによる、大出力マイクロ波で
爆撃に来るB29の乗員を、一撃で殺す秘密兵器を…』
『成功したんですか?』
『……』
『そんな兵器、きいた事がないですけど
実戦に間に合ったんですか?』
『…実験は成功したっ。』
『…ほうっ。』
『200m先に照射して…』
『…照射して?…』
『ウサギを殺すのに成功したっ。』
『そんな事やってるから、
負けちゃうんでしょう。日本。』
では、『今日の電気椅子。』
1890年に行われた、
初めての電気椅子による処刑の直前の写真。
この時、1回では死なず、
電圧を上げて急遽2回目が行われた。
再チャージを含めて1時間以上かかり
死刑囚はうめきながら、頭から煙を出して死んだそうである。
こうやって写真が残っているのは、
この処刑がマスコミに公開されたから。
あまりの悲惨さに、
カメラマンも反吐を吐いたという。
真面目なで建設的な話は、いずれまた。
念のため、今日の結論は
『ソーラー発電は、消費地で。』っていう事ですよ。
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