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2011年10月16日 (日)

信号のない鉄道

JR東日本が、宮城県の仙石線で  

信号機のない列車制御システム

「ATACS(アタックス)」の

運用がはじまった、というニュース。

(朝日新聞の記事へのリンク)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お前  これはすごいニュースなんだよ』

 

『鉄道の信号機ってえと、

線路の横に立っている?』

 

0000signal2_2 

 

六灯式なんて、よく見分けられるな。

 

 

 

 

 

信号ってのはそのライトだけじゃなくて、

附帯設備がすごい。これが無くせる

 

『はあ…』

 

『それに。信号機の誤認で42人が死んだ

信楽高原鉄道事故みたいなのが防げる。』 

 

『いいことです。』

 

 

 

 

 

 

『ここから先は、

今回の実験と直接つながる訳じゃないから

あくまで、可能性の話として聞いてくれ。』

 

『はあ…』

  

『この技術が完成したらな。』

 

『はあ…』

 

『鉄道は、倍の列車を走らせられる。』

 

『はい?』

 

『それだけじゃない。

自殺した馬鹿がいるから、

上り線運転休止なんていう、中央線名物も

なくなるかも知れん』

 

『はい?…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『鉄道ってのは、すぐに止まれない』

 

『まあ、鉄のレールに鉄の車輪ですから』

 

『だから、閉塞区間というのをつくって

その中には一本の列車しか入れない』

 

『そのために信号機がある、と。』

 

『ところが、この閉塞区間ってのは

むやみと長い。特にJRは長い。』

 

『なんで?』

 

『貨物列車が走るからだ。

長くて重くてブレーキの効きが悪い貨物は

制動距離が長い。』

 

『そういえば、

踏切の時間もJRの方が長いです』

 

『阪神なんか「ほらそこ」っていう所まで

踏切が降りないのに、

JRはまだ列車が見えない頃から

チンチン鳴りやがる』

 

『で、信号がなくなると?』

 

『閉塞区間に関係なく

列車が放り込める』

 

『安全なんですか?』

 

『だから、「ATACS(アタックス)」では

車間距離を測って、列車ごとに制御する訳よ』

 

『固定された閉塞区間がなくなる、と』

 

『車間距離さえあれば、ぎりぎりに詰めて

走らせられる

 

『車間距離も列車の種類によって変えられる』

 

『いままでは、ダイヤが変わると、

信号の設定を変え、場合によっては

信号機の位置まで変えていたんだ。

それが、列車ごとに変えられる。

ダイヤに柔軟性が出せるのは確実だ。』

 

 

 

 

 

 

『そういう列車って、

いままでなかったんですか?』

 

『方式は違うが新幹線は信号機に頼ってない』

 

『信号機がない?』

 

『もちろん信号機はあるけど、

200km/h以上で走る列車の安全を

運転士の視力と根性に任せるのは無理、

って事で、開通当初から  列車の位置を検知して

集中的に監視で来るようにしてある』

 

『まあ、信号を見てたら間に合わないですね』

 

『あと、路面電車にも「閉塞区間」はない。』

 

『一番速いのと、一番遅いやつが

信号に頼っていない…』 

 

『路面電車にも信号機はあるけど

鼻先をつなげるように走ってるよな。』

 

 

 

 

 

 

『事故が起きても上下線止まらないってのは

どういう事です?』

 

『自殺する、踏切に入る、架線が切れる。

いろいろ事故はあるけど、複線のうち

一本だけが止まる。って事は珍しくない。』

 

『そりゃまあ。』

 

『ところが、複線以上の鉄道の場合、

それぞれのレールは基本的には一方通行だ。

上り線に下り列車が入る事なんて許されない』

 

『ぶつかっちゃいますからね』

 

『それが、このATACSの方式が進化したら、

遠い将来には、列車の安全間隔を保ちながら

一本のレールに、交互に上下列車を

走らせることが出来るようになる。』

 

『そうなると?』

 

『こんな事がなくなるようになる。』

 

 

 

 

 

 

 

『おーい、いつ動くんだ?』

 

『本日はJRをご利用頂きまして

ありがとうございます』

 

『そんなことはいいからっ』 

 

『ただいま  立川駅付近で人身事故が

ありました。中央線上り電車の運転の見込みは

立っておりません』

 

『くそっ、中央線名物…』

 

『中央線というのは、まっすぐな線路で有名で

速くて便利だから競合路線がありません。

南部線で分倍河原までいって京王線に乗るか

モノレールで西武線まで行って乗り換えるしか

新宿に行く方法はないんです。

きょうは皆さん遅刻ですねえ。』

 

 

 

 

 

 

『そんな車内放送したら暴動が起きますよ?』

 

『それが、遠い遠い将来にはこうなる』

 

 

 

 

 

 

『本日はJRをご利用頂きまして

ありがとうございます。』

 

『いつ動くんだっ。』

 

『先ほど立川駅付近で電車にダイブした馬鹿が

いまして、上り線レールは使用できません』

 

『えー?』

 

『でも、だいじょうぶっ。

生きている下り線レールに、

上り、下り電車を交互に走らせますので

電車は止めません。

ご案内しますので、お乗り換え下さい』

 

『おーっ。』

 

『ただし、立川駅構内で、ほーんのちょっと

お見苦しい光景が見えるかも知れませんが

忘れて下さい』 

 

『…お見苦しい光景?』

 

『駅員が箸でいろんな物をつまんでいたり

していますが、さわやかな朝ですっ。

いってらっしゃいっ』

 

『え?どっち側?』

 

『あーたらしーい、あーさがきたっ。

きーぼーうの、あーさーだっ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

『3.11の震災や、この間の台風の時のように

帰宅困難者があふれた時にも、

対応が可能なんですかね?』

 

『安全が第一だから、

非常時に列車を走らせるかどうかは、

また別の判断だ。』

 

『そもそも、車両や運転士も手配しないと

いけないし』

 

『しかし、線路やシステムの容量が増えること

は確かだ』

 

『ラッシュの解消には役立つんですかね?』

 

『だから、お前。

これはすごいニュースなんだよ』

 

『……』

 

『どうした?これで、ラッシュアワーの痴漢も

減るかも知れん。

列車が増えれば、いままで見向きも

されなかったような駅が注目されて、

マンションが建つようになるかも知れん』

 

 

『でも、貧弱な線路にたくさん列車を

走らせるために

技術を研ぎ澄ませるってのは、

本末転倒じゃないですか?』

 

 

『…まあ、列車増発が、大目標ではないけどな…

でも、余裕があるって事は大事だぜ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

では、『今日の一枚。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『実験』が行われているJR仙石線。』

 

 

津波直撃。 

0000sensekisen2_2 

 

 

 

 

 

なんでこんな大変な路線で実験を?というと、

仙石線、というのは国鉄時代から

新型車両なんかの実験線になっていた。

 

最先端の技術を適用するのはいいことだけど

やっぱり大変そうだ。 

 

 

 

 

 

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ぼくは鉄じゃない」カテゴリの記事

コメント

あの信号機は六灯式というんですね
勉強になりました
今度電車に乗るときに見てみます
将来見れなくなる前に^^

安全性が確保されて
早くに実現されることを願います

投稿: れい | 2011年10月16日 (日) 14時41分

久々に穏やかな記事を読んだ気がします(笑)。
そういや、昔、JRに勤めてる友達が
「『マグロだ。これはマグロだ』って自分に言い聞かせながら箸で拾う」って言ってました。

投稿: 六郎 | 2011年10月17日 (月) 08時57分

れいさんありがとうございます。
6つもランプのある信号を見分けるのも
すごいですが
あれって、すごくたくさんあるんですよね。
電車の先頭車両で運転士さんを見ていると、
いちいち指差し確認をしているのが
大変そうだな、と思います。
 
六郎さん ありがとうございます。
『穏やか』ですか…
轢死体ってのは見たくありませんが、
血痕が残っているホームに
降りた時は、『うぉっ』っと思いましたね。
ああ、思い出しちまった。

投稿: natsu | 2011年10月19日 (水) 21時44分

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