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2012年2月25日 (土)

ニセ夜間金庫事件の日

『御利用のお客様へ

鍵の接損事故に困り投入口開閉不能となりましたので、

誠に御足労ですが、

当銀行専用通用口の仮金庫迄御廻り下さい。

                           三和銀行 』

 

 

 

 

 

 

1973年2月25日、夜8時40分

三和銀行梅田北支店の夜間金庫にこんな張り紙があった。

金庫の鍵は、使えない状態になっていた。

 

『仮金庫』までの道は、丁寧な案内が出ており

それに従うと銀行の通用口に『仮金庫』があった。

 

それは、一応それらしく見える見栄えになっており

何より、そこにはもう一つの張り紙があった。

 

 

 

 

 

 

 

『鍵は不要です。その儘御入れ下さい。

投入後、右のレバーを下方に一杯迄押して下さい。

レシートが出ます。

  
猶仮金庫ですのでレシートは成可く御持ち帰り願います。

                           三和銀行 』


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだか、『注文の多い料理店』のようだが

実はこれは詐欺。

 

 

しかも精巧に仕組まれた奇抜な窃盗事件だった。

実際、『指示』に従って『レバーを押すと』

ちゃんと、『SANWA 0000-0000』と刻印された

プラスチックの券辺が出てきたのだ。

 

だまされて『入金』した人は26人もいた。

 

 

 

 

 

 

 

夜間金庫というのは、サラリーマンには縁遠い代物ではある。

 

文字通り、銀行の営業時間外に入金のみ受け付ける。

 

個人商店や飲食店など、現金商売の店で

夜間に多額の売上金を持ち帰るのは嫌だなあ、

という人が利用する。

 

 

 

 

 

 

 

セキュリティについては知らないが

箱の仕掛け自体は簡単で、要はダストシュートである。

しかるべく手続きをして扉を開けるとふたが開いて、

お金が入れられる。

 

お金を入れて、またしかるべく手続きをすると

札束はドサリと落ちて、セットされている麻袋の中に入る。

それを、次の営業日に出勤してきた行員が、

入金記録とともに回収する。

 

 

貴様ごとき貧乏人が何故かような機密を知っているのか、

といわれると、実は

私は銀行の改修工事ばかり担当していた時代がある。

 

場末の銀行のATMコーナーなど…

…ふっふっふっ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実際、この事件は、よく考えられていて

銀行のセキュリティシステムの虚を突いたものだった。

 

 

まずは日付で、1973年2月25日は

給料日直後の土曜日。

 

さらに、狙ったのが夜間金庫だったということも盲点だった。

 

土曜日の午後8時40分に偽金庫をセットしても

月曜日の朝まで、行員は来ない。

『払い戻し機能』がない夜間金庫は

当時はセキュリティが甘かった。

 

 

犯人は、そういった事情を知り尽くして、

この時間帯と夜間金庫を狙ったのである。

 

 

 

 

 

 

三和銀行梅田北支店というのは、大阪駅の目の前。

大阪一の繁華街で、それこそ物販、飲食、風俗と

いくらでも現金商売の店があった。

 

給料日直後だから、各店の売り上げは順調だったらしく

『偽金庫』には続々と『客』がやってきた。

 

ここまでは、犯人の予想通り。

 

いや、むしろ予想以上で、予想以上だったが故に、

この事件は間抜けな結末を迎える。

 

 

 

 

 

 

お金が入りすぎて、

偽金庫が壊れちゃったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実は犯人は、偽金庫を見張っており、

適当なところで現金を回収するつもりでいた。

事件後の捜査で、そういった証拠が見つかっている。

 

『本金庫復旧につき、仮設金庫閉鎖致します』

という、第3の張り紙を用意していたのだ。

頃合いを見て、正規の金庫の扉にそれを張って、

偽金庫を撤去すれば完全犯罪だ、と。

 

 

 

 

ところが、『客』が途切れない。

 

犯人はじりじりしながら待っていたらしい。

この『偽金庫』を見通せる場所に吸い殻が複数落ちていた。

その横には、『第3の張り紙』も放置されたまま置かれていた。

 

 

 

 

 

 

ところが、たった30分で2600万近い現金が集まり

ベニヤ板で作った『偽金庫』は

メリメリと膨らんできてしまった。

 

 

怪しいと思った顧客が通報して、事件は露見。

その様子を見ていた犯人は『第3の張り紙』を残して

そのまま逐電した。

 

 

 

 

 

 

 

 

結論から言えば、

犯人は一文も儲からず、頭はいいけど間抜けな事件、

というイメージで報道された。

 

しかし、午後8時台の30分で2500万円も集まるのか。

そして、犯人は捕まっていないじゃないか。

ということで、この事件は、多数の模倣犯を生む。

 

 

 

1983年に埼玉、1986年に東京、2006年に静岡、と。

 

『ベニヤ板で貸金庫』と言うことが強調して報道されたので

模倣犯の『金庫』は、どれもお粗末で

金の詐取どころか、あっという間に逮捕されている。

 

 

 

 

 

『本家』の方の犯人も、

現金が略取できなかったのが悔しかったらしく、

3ヶ月後に『大丸大阪店恐喝事件』というのを起こしている。

 

こちらは梅田の『偽金庫事件』よりは、だいぶ泥臭い事件なのだが

犯行車両に使われていたベニヤ板が

『梅田の事件』と同じものである、ということで、

二つの事件は同一犯の犯行と見られている。 

 

しかしこの事件も、犯人は捕まっていない。

 

 

犯人が、金を取れなかったことも共通だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

冒頭の『案内文』の漢字の使い方から見て、

1973年当時でも、相当に年配の人物だったと思われる。

 

『誠に御足労ですが、…仮金庫迄(まで)御廻り下さい。』

『その儘(まま)御入れ下さい。』

『猶(なお)仮金庫ですので…成可く(なるべく)御持ち帰り…』

って、書けないよ…

 

 

『本来の金庫の封鎖。』

『案内板と誘導案内の貼り付け。』

『偽金庫の搬入と設置。』を

数分で行っているので複数犯である事は間違いないのだが、

いったい、どんな人たちだったんだろう。

 

 

 

 

 

 

もちろん、今の貸金庫でこんな犯罪はできない。

監視カメラ社会では牧歌的ですらある。 

 

もう時効になってからでも30年経つ。 

 

 

子孫の人でいいから真相を話してくれないかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『3億円犯人』と『グリコ・森永事件犯人』と一緒に

『覆面討論会』でもやってくれないだろうか…

 

 

 

 

 

 

『どうも…』

『よろしく…』

『久しぶり……』

 

『ははあ、皆さん話が始まりませんね…』

 

『そりゃ、まあ…』

『お会いしたことはありますけど…』

『そもそも、こんなインタビューで

お互いなんとお呼びしていいのか…』

 

『じゃあ、3億円事件の方は「府中さん」

グリコ犯の方は「江崎さん」、偽金庫事件の方は「三和さん」

ということで…』

 

『そうですね…』

『実名じゃまずいですもんね…』

 

『どうです?事件以来景気がよくなったんじゃあ。』

 

『とんでもない。』

『あたしも江崎さんも、現実にお金はゲットしてないわけです。』 

『そうです。まるっきり赤字ですよ。』

 

『なるほどなるほど。

お金を手にしたのは、府中さんだけだ、と。』

 

『ちょ、ちょっと待ってください。

もう、お金なんて残ってません。私だってむしろ貧乏ですよ…』

『なにいってんだい。俺たちの方がよっぽど赤字だ。』

 

『ははあ、皆さんも大変ですなあ…』

 

『三和さんは、あの偽金庫を作るのににいくらかけました?』

『いや、意外と安普請で数千円ですけど…』

 

『なるほどなるほど。

しかし、皆さん傷害事件を起こしていない、という意味で

「スマート・クリミナル」と呼ばれていますが…』

 

『いやあ、暴力沙汰は嫌なだけです。』

『でも、三和さんは恐喝事件を起こしてるじゃないですか?』

『…あれは、若かったから…』

 

『どうです?皆さん。この際、

現代の「シティ・ハンター」として復活してみたら…』

 

『いや、もうこの年じゃねえ…』

『そもそも、犯罪なんて割に合いませんよ…』

『レオタードも着れないし…』

『え?』

 

『じゃあ、もう皆さんおとなしく暮らしてらっしゃる、と。』

 

『あ、でもうちの35の娘はデブで太ってるけど、

練炭と睡眠薬で、君を夢見心地にさせてくれるぞ。

月額150万で、つきあってみないか?』

『うちの嫁なんか霊能者で「神のプランニング」が見えるんだ。

彼女にあったら、必ずみんな太る。

今度おまえさんにも紹介してやろう。』

 

『ははあ…そういう方向に行きますか?』

 

『そうだ。そういう詐欺みたいなことはいけない。』

『うん、今度俺がやろうとしているのは、

「景子と行く。マインドコントロール解放の旅」だ。』

『…おー。』

『ああいう「復活の仕方」もあるのか、と感心したよな…』

『ゲストには、数子と無道が同行して

全国のパワースポットを巡る…』

『参加料は?』

『一人500万円。』

 

 

 

『あんたたち、何にも変わってないよ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

では、『今日の一枚。』

 

 

 

 

 

 

 

 

『偽・夜間金庫』の実物。

表側(左)と、裏側(右)。

 

0000nisekinko  

 

 

 

 

 

 

 

 

現金投入口、レシート発行口などが確認できる。

さらに、『搬入』しやすいように、

真ん中で二つ折りにできるようになっているあたり

なんということでしょう。

 

基本的に木製だが、顧客側は金属にみえる「なにか」で

覆われている。

 

『ステンレス版』だったり、『アルミ板』だったり『アルミ箔』だったり、

資料によって違うのだが、アルミ箔はばれるんじゃないかな?

 

いずれにしても、表面から押縁で止めているあたり

金属加工に関しては素人の仕事だ。

 

こんな細工に引っかかるもんかなあ…

意外に、正規の金庫の横に

張り紙があったら信じちゃうもんだろうか?

 

大阪の商売人なんて、

日本一騙しにくい人種だと思うんだけど…

 

 

 

おもしろい事件だなあ…

 

 

 

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コメント

この事件はテレビで観た事がありますが
盲点をついた面白い事件ですね
面白いと言ったら怒られそうですが
内部の事情を知っていて
実行力が伴えば、色々出来るんですね

「覆面対談」に爆笑しました
いつもありがとうございます^^

投稿: れい | 2012年2月25日 (土) 15時26分

れいさん ありがとうございます。
面白い事件だと思いますよ。
思いついても、実行できないけど…
 
飯干景子はなに考えてるんでしょう。
『あたしの経験から言えば』って
うるせえよ、と思いますよね。
 

投稿: natsu | 2012年2月27日 (月) 12時32分

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