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2012年3月 8日 (木)

鉄路かバスか?

東日本大震災で被災した鉄道。

もうめんどくさいからバスで復活させないか?

というニュース。

(読売の記事へのリンク)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東日本大震災で被災した、気仙沼線、山田線、

大船渡線のそれぞれの一部は

一周年たったいまでも運休している。

 

以前も書いたが、津波を浴びた場所に

そのまま再建するのか?

街が移転するんじゃなかったのか?といった

事情で話が進まない。

 

 

しかもいまになって,JRは

『あの辺は赤字線ばっかりだからなー』と

言いだしている。

 

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(1日・1kmあたりの輸送密度。 

4000人が特定地方交通線の目安で廃線の対象基準だった)

 

 

 

 

かつて国鉄は『営業係数』というものを

毎年発表していた。

100円稼ぐための経費はいくらか?という数字

昭和56年度の悪い順の営業係数がこちら。

ちなみにこの時のベスト1は山手線で66。

 

 

深名線(北海道)2901
白糠線(北海道)2872
美幸線(北海道)2804
万字線(北海道)2773
漆生線(福岡県)2651
室木線(福岡県)2540
胆振線(北海道)2432
富内線(北海道)2276
湧網線(北海道)2156
興浜北線(北海道)1997
上山田線(福岡県)1982
相生線(北海道)1866
渚滑線(北海道)1761
宮原線
(大分・熊本県)1728
小松島線(徳島県)1680
岩内線(北海道)1663
香月線(福岡県)1542
興浜南線(北海道)1536
日中線(福島県)1447
宮之城線(鹿児島県)1426
士幌線(北海道)1411
倉吉線(鳥取県)1400
糸田線(福岡県)1385
勝田線(福岡県)1286
魚沼線(新潟県)1283
標津線(北海道)1283
山野線
(熊本・鹿児島県)1148
三江線
(広島・島根県)1086
瀬棚線(北海道)1069
名寄本線(北海道)1066
三木線(兵庫県)1041
角館線(秋田県)1036
大隈線(鹿児島県)998
池北線(北海道)987
越美南線(岐阜県)961
日高本線(北海道)940
天北線(北海道)887
丸森線(宮城県)873
志布志線
(鹿児島・宮城県)847
只見線
(福島・新潟県)844
松浦線
(長崎・佐賀県)843
飯山線
(長野・新潟県)840
木次線
(島根・広島県)813
阿仁合線(秋田県)757
広尾線(北海道)751
幌内線(北海道)747
二俣線(静岡県)734
岩泉線(岩手県)728
北条線(兵庫県)721
松前線(北海道)719
佐賀線
(佐賀・福岡県)692
足尾線(栃木・群馬県)677

 

係数最悪の深名線の場合、

100円の収益のために2900円をかけなければ

ならない訳で

『国鉄、けしからん。』

という世論を醸成することになった。

 

 

実際、この『営業係数』は国鉄がJRになるときの

『廃線判断』に使われた。

 

 

 

 

 

 

しかし、よく考えて欲しいのだが、

いくら深名線の駅員が怠け者だったとしても

山手線の駅員の1/5しか働かなかったわけではない。

路線の建設費や維持費、人件費などが織り込まれて

実態とはほど遠い数字が一人歩きしていたのだ。

1日数本の列車が

年間数億円の赤字を生み出すわけがない。

 

 

 

 

もちろん、赤字線を許せ、

というつもりはない。

 

 

 

 

しかし、あまりにも実態を離れているよな、

ということで、JRになってからは

この『営業係数』の発表というのは

行われなくなった。

 

営業主体が変わったから比較する意味がない、

というのが公式コメント。

 

 

 

実際は、公表なんかしたら、

JR四国は全線赤字線である。

 

 

 

 

 

だから、今回、読売の記事が『輸送密度』を

公表してきたあたりに作為、というか

誘導を感じる。

 

『どうせ赤字線だから、

鉄道なんて生意気よ。』

という雰囲気を感じませんか?

 

 

 

 

 

読売新聞の言うことは信じない、というのが

我が家訓なので、私みたいなへそまがりは

だまされないが

世間の紳士淑女はだまされちゃうじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、思惑の話はさておき

鉄道とバスのどちらがいいのか、ということを

考えてみよう。

 

実はこれが、よそ者が口を出すには荷が重い

話題なのだ。

 

 

 

 

 

 

まず、バスならば小回りがきく

 

鉄道だと、駅の間隔は最低でも2kmくらいに

なるが、バスなら手を挙げたら停まれる。

労使関係がうるさい時代だと、国鉄は

空気を運ぶ列車でも、運転士と車掌の二人を

乗せないと運転できなかった。

 

実際国鉄のローカル線が

営業係数2000とかの大赤字になったのは、

『赤字→減便→さらに赤字』

という悪循環を繰り返してきたからだ。

田舎に行くと、2時間に1本という路線が

珍しくなかった。

 

 

そこに行くと、バスであれば運転間隔も停留所も

細かく設定できる。 

本来の鉄道の路線を外れて、

病院や役場、学校などを回るルートを

決めることもできる。

 

 

 

 

 

 

 

その一方、

バスの輸送力などたかが知れている。

 

 

ローカル線にも客が乗る。

一番のお得意さんは学生で、登下校の時間には

客があふれる。

 

もう一つは工場の従業員。

東京だと鶴見線。大阪だと桜島線なんてのが

その代表。

 

鶴見線はテレビとかで妙に有名になってしまい

桜島線はユニバーサルスタジオの専用線に

なってしまったが

いまでも和田岬線なんかは

三菱の工場群の通勤専用線だ。

 

  

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和田岬線の平日ダイヤ

朝の9時10分から

夕方の5時15分まで列車がない

 

 

 

 

 

 

 

さすがに通勤専用線。

従って、日曜日はこうだ。 

 

 

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1日2本。 

 

 

 

 

 

 

こういう風に、朝だけどかっと人が乗るけど

昼間は素寒貧というふうに

輸送需要が急変する場合、バスでは対応できない。

 

 

 

 

 

かつて、ローカル線に『レールバス』というのが

導入されたことがある。

バスがレールを走るのだ。

理由はいま東北の復興に際して

JRが言っている事と同じで、

鉄道なんかもったいないじゃんということで

全国のローカル線が導入した。

ガソリンカーとも言った。

 

 

全滅した。

 

 

いや、まだ生き残っているところがあるかも

知れないが、バスの車体では需要の急変に

対応できないのだ。

 

鉄道なら一両の容量がバスの倍はあり

さらに連結することができる。

 

 

 

 

 

輸送力、という点で言えば

バスは鉄道にかなわない。

 

そして小回りがきくという点では

鉄道はバスにかなわない。

 

 

 

 

 

 

 

 

その一方、被災自治体がなんとしても

鉄路を残そうという理由もわからなくはない。

 

鉄道の廃止だと全国ニュースになるが

バスに転換してしまったら、その減便や廃止などは

地方ニュースにすらならないのである。

 

 

 

 

 

 

かつて、国鉄が滅びるとき

赤字ローカル線の切り離し、ということを行った。

誰か(実質的には地元自治体)に引き取りませんか?と。

 

当時でも大反対が巻き起こったことなので

国は慎重に事を進めた。というよりも

舐めてかかった。

 

『言うことを聞いて第三セクターを作ったら

転換交付金をやる。』

『未成線に関しては、

完成までの工事費を国で持つ。』 

信じられないくらい甘い条件だが

それでも引き受ける奴なんかいないだろう、と。 

 

 

 

 

国鉄の営業係数を信じる気はしないが

まさか、手を挙げて運営する自治体はいるまい。

と思ったら、

1984年に真っ先に手を挙げたのが

今回大被害を受けた三陸鉄道で

意外なことに初年度から黒字をあげた。

 

国鉄時代の統計では収益の

7倍の経費がかかると言われていたのが

黒字になった。

これ以降日本中に『第三セクター』が乱立する。

 

 

 

 

 

しかし30年経ったいまでは、

その三陸鉄道も赤字。

 

というか日本中の

第三セクターのすべてが大赤字である。

 

補助金で食っている。

 

 

 

 

 

 

 

読売の記事が言っているBRT というのは

過去の日本でも例がある。

 

 

BRTというのは、

鉄道の路盤をそのままバス専用道にしようと

いうもの。

北海道の白棚線などは今も現役の

バス転換路線である。

 

 

もちろん欠点があって、まず道路にした場合、

幅員が狭い。

国鉄の場合、レールの軌間は1067mm、

車両がぶつからないための『列車限界』は

幅3mなので道路より狭い。

道路法が定める『道路の最小幅員』は4mである。

 

 

従って、『廃線跡』というのは

バスとして需要がなければ、

ほかに転用できない。

使い道がないのだ。

 

日本中に廃線跡というのがあるが

経済的にウハウハな有効利用がされていないのは

サイズが中途半端だからである。

 

 

 

 

 

それなら鉄道として残すべきか?

私の立場は、何となく鉄道寄りなので、

残せるものなら残してあげたらいいと思ってしまう。 

 

しかし、今回被災自治体が

鉄路での復旧を要望している理由のひとつが

『鉄道ならば、三陸を縦貫する列車を

走らせられる』と言っているらしいのだが、

これはおかしい。

 

気仙沼線の全通が1977年。

三陸縦貫鉄道北リアス線の、普代-田老、

南リアス線の吉浜-釜石の開通が1984年。

仙台-久慈間全線を通して走る列車の登場は

1997年。

需要がなくて、

震災直前には定期列車はなかった。

 

 

 

建設が遅れたのは地元の責任ではない。

一時的とはいえ『第三セクターでも黒字になる』

ということを実現できたのは、

日本の鉄道史に大きな影響を与えた。

 

しかし、黒字は維持できなかった。

『マイレール意識』が高かったはずの三陸でも

自力での鉄道の維持はできなかった。

 

 

 

 

『三陸全体の広域鉄道』というが

そもそもそんな需要はなかったということだろう。

 

ローカル線の『ローカル』は『地方』

という意味もあるが

本来は『ローカルトリップ』ということで

あるはずだ。 

つまり、線区内の移動。

 

そのレールが東京につながっている事は

夢であり希望かも知れないが 

現実に毎日乗っているのは学生と、

病院通いのおばあちゃんなのである。

 

 

 

 

 

 

どうも、今日の話は落としどころがなくて

困っている。

私自身に腑に落ちる答えがないのだ。

 

だから今回の話に結論はない。

 

 

よそ者が決めつけるようなことを書いては

いけない気がする。

 

 

 

しかし、ここまでの文章の温度で

感じ取っていただけるものがあると思う。

いろいろとめんどくさそうだな、

ということだけでも

感じてもらえたらいいと思います。

 

3.11直前にこんなニュースが流れてくる

あたり『誰かの意図』を感じてしまうのだが、

1周年だから、考えないといけないことでも

あるんでしょう。

 

 

 

 

ただひとついえることは、

早くやろう、ということだけです。

 

 

 

 

 

バスなんか通したら、改めて線路なんか

敷かないだろう、

という心配は、すごく正しいと思うのだが

時間が経てばバスさえ維持できまい、

という気もするのだ。

 

 

 

 

鉄道は地域の血液だ。

 

地元は、見栄を張っているだけのような

気がする。 JRも3年後くらいにひっそりと

『廃線のお知らせ』を

乗せそうなところが信用できない。

 

しかし、いつまでもほおって置けば

『交通弱者』はおろか

沿線に誰もいなくなる、というのは

悲観的に過ぎる想像だろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

では、『今日の一枚。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鉄道も走りたいし、道路も走りたい、という

鵺のような要求をかなえる魔法の乗り物、

DMV

(デュアル・モード・ビークル)

0000dmv  

 

 

 

 

 

写真のように線路を走るときは、

台車についた車輪で走る。

アスファルトの上ではタイヤを下ろして走る。

 

 

鉄路を維持しつつ、こまめなサービスができる。

路線を延伸することもできる、

ということで、ほぼ全線ローカル線の

JR北海道が試作したのがこの車両。

いずれ全国のローカル線にも売り込みたい、と

 

 

構想としては大昔からあったが

この実験車両が作られたのは2004年。

現在までに導入した鉄道会社、皆無。

 

 

 

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