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2012年5月18日 (金)

ダム爆弾の日

5月17日は『ルールダム破壊攻撃』の日。







1943年のこの日、イギリス空軍の爆撃機隊が

ライン川にあるダム群を攻撃し

メーネ、エーデルのふたつのダムを破壊した。


  

 

1955年の映画、『暁の出撃(Dam Busters)』。
     

     




Wikipediaだと『チャスタイズ作戦』として紹介されている。

投下された爆弾は、映画のほうが正しくて球形です。

     

     

  Mene_dam     

 

破壊されたメーネ・ダム

 

 

 

    





ドイツ最大の工業地帯がライン川沿いにある。

ここにあるダムは、発電、農工業用水と

多岐に利用されている。

 

 

ライン川は、アルプスに源を発し、

アムステルダムで大西洋に出るのだが

ドイツ領内では、ほぼ真っ平らである。

 

 

ここにあるダムを破壊すれば、

ドイツの産業に打撃を与えられるだけじゃなく

下流に洪水を起こして、大騒ぎじゃないか?

と考えた人がいた。

 

    

バーンズ・ウォリスという人で

冒頭の映画だと、メガネを掛けた白髪の人。

この作戦で使われた『ダムバスター爆弾』や

要塞破壊用の巨大爆弾『トールボーイ』の開発

などを行った。

 

 

一種のマッド・サイエンティストだと思うが

この作戦の成功が評価されて

戦後ナイトに叙されている。





     

     



実際ダムってのはそうそう簡単に壊れる代物

じゃない。

  

メーネダムでいうと堤体の頂部で幅員8m、

基底部の幅は32mもあって、

どう計算しても10t爆弾が必要だよなあ、でも

そんなもの運べる飛行機なんかないわ、という

ことで空軍に相手にされなかった。

 

 

ところが、この人は執念深くていろいろ研究し

爆弾を水切りのように水面で反跳させて堤体に

ぶつけ、基底部で破裂させたら破壊できるぞ、

という時限信管付の不思議な爆弾を作り上げる

 

    

イギリス軍の面白いところは、こういう

意表を突いた爆弾を、いきなり実戦に使用

しちゃうところで、実際にこうやって使った。

(廃ダムを使った実験とかは行っている。)










ドイツはどうだったか?というと、

ダムの重要性はもちろん理解していた。

イギリス空軍の攻撃範囲内にあることも

承知していた。

  

しかし、水平爆撃なんか当たるはずはなく、

新型爆弾を作っているなど思いもしなかった。

むしろダムに魚雷を撃ち込まれるかも知れない

ということを警戒してダム湖に防雷網を張った

 

 

イギリス空軍のガイ・ギブソン少佐

617飛行隊の猛訓練の上での技量の奇跡は

もちろんだがドイツ軍もこんな攻撃、予想も

していなかったわけだ。

 

 













大戦略に対して新作戦と新兵器を用意して

成功させたイギリスに対して 




 









日本はどうだったか?というと、

もっと雄大な計画を持っていた。

『パナマ運河破壊作戦』である。

  

日本軍の常として

『怪力光線』とか『風船爆弾』とか構想段階、

あるいは実際に用いられても嫌がらせ以下で

しかなかった兵器や作戦と比べると、

この計画は本気だ。

 

   

なにしろ、パナマ運河破壊用の

800kg爆弾を運べる爆撃機を作った。

    

Seiran_2          

 

晴嵐 

 

 

 

 

ルールダム破壊に使われた爆弾が1トンだった

から、800kgで十分にリアリティがある。

   

パナマ運河は水平に造られているわけではなく

高さの異なる三つの水面でできている。 

その間は閘門と呼ばれる可動の水門で

仕切られている。

 

 

300pxpanama_canal_gatun_locks_openi   

 

ガトゥン閘門

 

 

 

 

 

ダムと違って、これなら通常爆撃で壊せる。







もちろん、日本からパナマ運河までは

太平洋を横断しなくてはいけないので 

とてもじゃないが飛行機では行けない。

どうするか。




潜水艦で飛行機を運ぶ。





このあたりからだんだん訳がわからなくなって

くるが、日本軍の潜水艦は飛行機が積める。

甲板の上からカタパルトで射出する。

飛行機にはフロートがついていて、

潜水艦の近くで着水して収容する。












第二次大戦での、日本潜水艦の評価は低い。

ドイツやアメリカのように通商破壊作戦に

使うことが少なく、大型で音がうるさく、

数も少なくて戦局に影響を与えなかった、と。

 

ひどい。

 

発想が違うのだ。

 

ロンドン、ワシントンの軍縮条約で米英海軍に

対して圧倒的劣勢を強いられた帝国海軍は

潜水艦を決戦兵器の一つにしようとした。

 

 

艦隊決戦の際には最前列に配し、偵察・哨戒に

任じる。ソナーもレーダーも不十分な時代

だったから偵察機を積む。

 

 

そして、

いざ敵艦隊が近づいたら魚雷をぶっ放して

敵を混乱させる。  

 

 

日本の潜水艦の93式魚雷は雷速90km/hで

射程22km。

雷速を落とせばなんと40km先まで届く。

神戸から大阪、東京から横浜よりも先に届く。

 

 

もちろん当たらない。

相手の軍艦だって走っているのだ。

高速機動部隊なら50km/hで走る。

  

40km先の自動車に、リトルリーグ程度の

球速のピッチャーが球を投げるようなものだ。

狙っては当たらない。

 

 

だから潜水艦が戦列を作って、一斉にぶっ放す

一隻が同時に6本の魚雷を撃てるから、

数を撃ってびびらせれば敵を40km以内に

近づけさせられない。

 

 

アメリカのアイオワ級の射程が38km。

戦艦大和級の主砲の射程が42kmだから

40kmくらいの距離なら、日本艦隊が

一方的に打撃できる。

 

 

  

実に緻密な計算である。

 

 

 

 

残念なのは、

そんな機会が一度もなかったことだ。

  

しかしそういう前提だから、日本の潜水艦は

でかい。

   

日本の伊一五号潜水艦が3650tなのに対して

アメリカのガトー級潜水艦は2400tで二回り

小さい。(いずれも水中排水量) 

 

 

飛行機を積んだ伊号潜水艦はアメリカ本土爆撃

を行っており、

正規軍による本土爆撃を行った国は、

アメリカ建国236年の歴史で大日本帝国だけだ

 

 

 

  

ただし、でかい日本潜水艦でも

800kg爆弾を積む晴嵐は収容できず

日本は、パナマ運河破壊作戦のために

水中排水量6500tの巨大潜水艦伊四○○型

3隻作った。

 

 

   

本気なのである。

 

    

しかしながら、

潜水艦と飛行機がそろったのは終戦の8ヶ月前

  

パナマまで行く燃料がなくて中国に取りに行き

瀬戸内海は空襲が酷くて、訓練ができないので

富山に移って

正式に訓練を始めたのが終戦の2ヶ月前。

  

もう、いい加減パナマ運河じゃねえよな、

ということで、アメリカ海軍のウルシー泊地に

攻撃目標が変えられて出撃したのが

終戦一ヶ月前。

 

 

当たり前だけど、間に合わなくて

8月14日に作戦中止が指令され、

伊号潜水艦は攻撃隊の晴嵐を海没処分にした。

 

 

護衛戦闘機なんかいないから、

敵だと思われたらたたき落とされてしまうので

晴嵐の胴体には、日の丸ではなく

米軍機を示す星マークが描かれてた。












さて、イギリスの成功と日本の失敗の差は

どこにあったのでしょう。














パナマ運河破壊を優先するのなら爆撃ではなく

アメリカ籍の船を密かに買収し、

船底に爆薬を積んで

運河の通過中に自爆させれば良かったのだ。

  

パナマ運河とその附属地帯は

つい最近1999年までアメリカの租借地だった

というより

大統領が気に入らないと89年にパナマ侵攻

しちゃうくらい事実上の植民地だったので

現地人もたくさん働いていた。

そいつらにスパイを紛れさせてもいい。

  

国際法に違反してもかまわない、と

晴嵐の国籍マークを書き換えたんだろう。

  

卑怯に徹するつもりなら、

いくらでも方法はあったような気がする

  

破壊工作だけならなにも、

潜水空母なんか造らなくても良かったんじゃ

ないのか?










目的に対して、手段を単純にして

それだけに先鋭化していくという事ができたか

どうかが

イギリスの成功と日本の失敗の

境目だったような気がする。

     

伊四○○型の航続距離は地球1周半だから

『ワシントン空襲』も『ロンドン空襲』も

可能だった。

そういう使い方も考えていたらしいのだが、

就役が昭和20年1月ではどうにもならない。

どんな使い方をしても猫だまし以下だ。 

   

そんな時期まで、

的外れな兵器の開発から離れられなかったのは

日本海軍というのが余程硬直した組織だったと

いうことか?

 

 

 

どう考えても

人材と資金の無駄遣いだ。   






       

       






原発事故の処理とか

この夏の節電対策とか新エネルギー開発とかで

いまも、同じ事をしていませんか?















       

       



では、『今日のイ402。』










呉で修理中に終戦となり、米軍に接収された

イ402号。 

  

甲板の上のレールがカタパルト。

艦橋のでかいふたを開けると

二重に主翼を折りたたんだ晴嵐が出てくる。 

 

  

ディスカバリーチャンネルの映像らしいが

何故かロシア語に翻訳されているので

さっぱりわからない。

 

 

 

 

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お蔵出し文章第2弾です。

多少校正していますが、ひと月前は元気だったな。

 

 

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コメント

確かに、潜水空母なんて、発想が完成にいたるまでにねじ曲がってきた気がしますね。紆余曲折をそのまんま盛り込んでしまったような。
科学技術が戦争と結びついて、時代は大きく変わりましたね。命を粗末にしがちでしたが、男たちがまぶしい時代でした。第二次宇宙開発戦争時代が始まっています。時代が大きく変わるといいなあ。

投稿: fullpot | 2012年5月19日 (土) 07時41分

fullpotさんありがとうございます。
  
伊四〇〇型への飛躍は
ちょっと極端ですよね。
   
宇宙人の侵略、というと
ジョージアのCMのトミー・リー・ジョーンズ
を思い浮かべるのですが
あんまり極端な目標を立てると、
兵器のシステムすっとこどっこいになるから
単純にした方がいいと思います。

投稿: natsu | 2012年5月20日 (日) 00時21分

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