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2012年5月28日 (月)

超小型車の時代

政府が音頭を取って、

一人から二人乗りの『超小型車』の普及を

目指す、というニュース。

(5/27 読売新聞の記事へのリンク)











現在の軽自動車は660ccで四人乗りなのだが、

これとは別に125ccで一人または二人乗りの

車の規格を作る。

それをもとにメーカーに開発を促し

自治体が観光地でレンタルするなどして

公道を走る実験を行い、

制度を整えて一般の販売を目指す。

高齢者などの交通弱者解決の切り札にしたい、

だそうだ。



   

読売はこのニュースにご執心で、

経済面でも取り上げており、

『車離れの若者にも』といっている。

















   

実をいうと、

軽自動車以下の『超小型車』というのは

すでにある。

街中で、ゴルフ場のカートみたいな車を

じいさんが運転しててろてろと走っているのを

見たことがないだろうか。

 

200pxmitsuoka_motors_micro_car



こんなの











ミニカーとかマイクロカーと呼ばれる

カテゴリーの車で、

エンジンは50cc、あるいは同格の出力のモーター

一人乗りで税金は安く、車庫証明もいらない。

一般に任意保険も安い。



規格としては1963年からあったが

石油ショック後に注目され、

メーカーが乱立するブームとなった。



ところが1985年に道交法が改正されて

普通免許が必要になると急速に人気が落ちる



そもそも、所詮50ccなので、

3輪あるいは4輪のボディを乗せると極端に

非力である。


現在も市販されている『タケオカ・ミリュー』

カタログスペックで最高速度60km。

最大登坂能力18度だ。

だから高速道路は走れないし、一般道を走るのも怖い

スーパーの地下駐車場の車路などで

たまにとんでもない勾配の坂道があるが

下手をすれば登れない。




そのくせ道交法では『普通自動車』なので








歩道を走ってくるんじゃないっ。









かつては国内だけで10社以上のメーカーが

あったらしいが、現在も製造・販売をしている

のは1社だけだ。









そういうことを踏まえて改めて今回のニュース

を眺めて欲しい。

何しろ読売は、27日の朝刊1面トップが

この記事だったのだ。

ここにある『意図』はなんだろう。




いろいろなものの『きっかけ』にしたいのだろう。




『高齢者向け』が大義名分だから、

安全技術の博覧会のようになる。






アクセルとブレーキを踏み間違えようが、

当たり屋が30人同時にダイブして来ようが、

てんかんになろうが、ぽっくり逝こうが

絶対に自動で止まる。  

万一事故になっても運転手を押しつぶす勢いで

四方八方からエアバッグが飛び出し、

ぶつかった相手をも弾き飛ばすような

エアバッグが出てくる。

全方位にカメラがつき、スピードメーターも

燃料計も、ナビも

全部ヘッドアップディスプレイになり、

あらゆる警告音は3段階で音量が調節ができて

信号待ちで眠ったらわさびガスが出てくるんだ
 





ただし、全部オプションで、別料金で。





電気自動車も作られるだろう。

小型化が絶対条件だから、

航続距離の点では厳しいかも知れないが

有料電気ステーションの

社会的ストックに投資する為の

錦の御旗にさせられるような気がする。






ホイールインモーター自動車、なんていうのも

これで実用化するかも知れない。

車輪ごとにモーターをつけちまえ、というのがこれ。

構想としては戦前からあるが、市販車としては

まだ実現していない。

トランスミッションがいらなくなるから

小型化と軽量化には最適。

車輪ごとに違う動きができるので

4WDの概念が根底から変わる。

真横に動いたり、その場でくるくる回ったりできる。

2項道路(※1)ばかりの日本の都市でも

これで大丈夫だ。



セグウェイまで許可しようという狙いは

なんだ?













しかし『マイクロカーの失敗の原因』を

何一つ解決していない。






免許は必要に決まっているし、限定免許を

作るにしても視力検査も怪しいような年寄りが

教習所に通って免許を取りに行くだろうか?



ドラえもんをCMにかり出しても

免許を取らない若造が

教習所に行くだろうか? 














そもそも若造が車を買うのは

デートに使いたいからだ。




言い切っちゃうのもどうかと思うが、

バイトして無理をして中古車を買ったり、

中免を取ってタンデムできるバイクを買うのは

隣に乗せたい人がいるから、あるいは

いたらいいなあ、ということだ。


一人乗りの車なんか買うか?







税金を安くするのはいいとしても、

保険会社が新規に年寄の保険を引き受けるだろうか?

仮に引き受けるとしても割高になるだろう。


若者の保険料というのは、もとから

若ければ若いほど高い。






田舎ならともかく都心部で路上駐車前提の車を

販売するのが許される時代ではない。

軽自動車でさえ、都市部では

1990年に車庫証明(※2)が必要になった
 
 
車庫証明が必要だとして、戸建てならともかく

アパートで年金暮らしの人が

駐車場を借りるだろうか?

そして、駐車場を借りたところで

雨の日にそこまでいってミニカーに乗り、

スーパーの袋を抱えて帰ってくるだろうか?

交通弱者は都心にもいる。





橋下さんが大阪の市バスの赤字に怒っているが

あれを全廃、あるいは民営化して減便したら、

270万都市の真ん中で買い物に行けない年寄り

が出てくることは

残念ながら確実なのである。








保険や駐車場については、

福祉のことだけ考えたら、『シェアリング』

いう方法もある。

しかし、貧乏人 交通弱者相手の商売に 

独立採算のめどが立つはずはないので

行政の保護が必要だ。



許されるのか?












うがった見方をすれば『交通弱者』云々は言い訳で

狙いは輸出ではなかろうか。





若者が減って、もう国内市場の伸び代はない

だから老人をターゲットに、ということ

なのかも知れないが、

ただでさえ新車販売の4割が格安の軽自動車で

さらに安い車を作っても国内市場にうまみはない。




いま、世界で一番たくさん車を買うのは中国人だ。

あの国の連中は見栄っ張りで

70年代まで『北京の朝の風物詩』といえば、

交差点を押し渡ってくる自転車の波だったくせに

いまや高級車もどきを買う。



しかし、まだ安い層はいくらでもいる。





トヨタやホンダがインド市場に投入している車は

80万以上するのだが、

インドで一番売れているスズキアルトは40万だ。

インド国産のタタ・ナノは30万だ。

でも、まだ高い。それ以下なら買う層は確実にいる。



それ以外ブラジルなど

中産層が猛然と車を買い始めている国もある。



社会資本が貧しい国だとガソリンエンジンを

積むしかない。

しかし125ccならバイクのエンジンが

そのまま積める。

三等国仕様なら空冷のままで十分だ。

国内のバイク販売は壊滅状態だから

救世主になるかも知れない。







おしゃれな電気自動車としてなら、

むしろ先進国で売れるような気がする。


実際、ヨーロッパでも小型車の共通規格化が

検討されている。


ヨーロッパでは、都心部への車の流入を

抑制している都市が多いが

そんな街でも許容されるかも知れない。



スポーツチャリンコが世界中でブームに

なったように

おしゃれミニカーの市場は、きっとある。


何より、以前紹介したように

超小型車に関してはヨーロッパの方が先輩で

かっこいい車が山ほどあったのだ。 












なんかいろいろと考えてしまう記事なのです。

注目していきましょう。























では、『今日の一枚。』














世界一小さな車、として有名なピール・P50という車

 

P50



一人乗り

50cc 4馬力








1962年から65年まで生産されました。

これはその当時の一台。

『大人一人と、買い物袋を。』がキャッチフレーズ。



徹底的な小型化と軽量化のために

いろんなものが省略されている。 

写真を拡大するとわかるけど、

この車は右側にドアがありません。

イギリスは左側通行なので左にしかない。

ついでにバックギアもないので、

自力ではバックできません。



1963年の価格は199ポンド。

現在の値段で20万円弱


2010年から復刻版が作られているらしいので

広い土地を持っている人は買ってみたらどうでしょう

(復刻版は、日本はもちろん、

イギリスでも公道は走れません。

オリジナルは何故かイギリスではいまでも

走れるそうです。)






これも、以前紹介したけど

The Bruce Weiner Microcar Museum



ミニカーの時代ってのは確実にあったわけです

なにより、かっこいいなあ。










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※1 建築基準法42条2項に定める道路。   

  『道路ってのは幅4mないと駄目なんだけど、

         そんなこといってると

   日本中の長屋や町屋が違法建築になっちまうから

   そういう場所では道路と見なしてやるよ』という

   ありがたいお達し  

   ビフォーアフターなんかで、

         ぼろぼろの骨組みでも補強して使うのは、

         骨格をばらすと、

         改築あるいは新築ということになって 

   敷地を削って道路をひろげないといけない場合が

   あるから。   

 

※2 軽自動車の場合、保管場所届出といって

   厳密に言うと車庫証明とは違う。

 提出が必要な地域は都道府県によって定められて

         いるので県警や公安委員会で確認しましょう。

 

 

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コメント

建築基準法42条2項道路が実際には、
4mに足らずしかも住民が植木鉢を並べた道路に
うっかり入ってしまって、しかも行き止まりだったら
悲惨であります

雨の夜だと植木鉢をなぎ倒して走らなければいけません

たまに軽自動車を運転して、しばらくすると
軽自動車という事を忘れて坂道を登らないことに
気が付いて焦ったりする訳です

さあて、車はこれからどうなるのでありましょう

投稿: FREUDE | 2012年5月28日 (月) 13時06分

FREUDEさん ありがとうございます。
 
ひああああ。『2項道路』を『道路法』
と書いてましたね、お恥ずかしい。
 
一律に広い道路がいいとは思わないし
路地の風情もいいんですが、
今回の規格新設にしても
何か本音を隠している
部分があるような気がして嫌です。
 
路地にはまって泣きながら300m
バックで下がったことがあります。

投稿: natsu | 2012年5月28日 (月) 18時10分

こんにちわ
老人ですからゆっくり読ませていただきました。
普通車の免許を取ってから40年、
もう乗らない自動二輪中型の免許もあります
無事故です。車には、勿論毎日乗っています、ほんのちょっとお出かけで

さて、凄い深読み、ウ・・ ウン(・_・;)
正も否もあるかもしれませんが、
とても面白いし受け売りするには充分です
ありがたいです。

あまりおしゃべりの相手がありませんので、まあ大体ここで止まりますね。

そろそろ、運転は止めたい・・・と思っていますが、今の生活では運転をせざるを得ません。


楽しいお話ありがとうございました。
よろしかったら、私にも応援賃としてランキングポチをお願いしたいです。

ドウゾよろしく

また、お会いしましょう。

投稿: 四季 | 2012年5月29日 (火) 10時09分

四季さん ありがとうございます。
返事が送れて申し訳ありません。
 
何か本音を隠しているような気がして
いろいろと考えてしまうんです。
 
狙いはたぶん、
電気自動車だと思うんですが…
輸出も考えられるかなあ、と。
  
もう、車を運転することなんか、
あんまりないんですけどね。
 
またよろしくお願いします。


追記:たぶんリンクが間違っていると思うので
そちらにたどり着けません。
また連絡ください。

投稿: natsu | 2012年5月31日 (木) 01時06分

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