オリンピックとドーピングとステートアマ-2-
さて、昨日の続き。
ドーピングというものがある。
薬物を摂取することで、
興奮させたり身体能力や筋肉を増やす。
最近は、風邪薬を飲んだり毛はえ薬をつけるくらいで
ドーピング、ということになったりして敏感だ。
薬まみれの生活をしている身の上からしたら、
『神経質に過ぎるんじゃないか?』とは思う。
まあ、オリンピック出場をを争う人くらいになると
薬ひとつで命に関わるそうだから、
あまり無責任なことは言ってはいけないのだろう。
かつて、『ステート・アマ』というものがあった。
つまり、『国家が応援する人。』
国際大会に出るような人には、
世界水準を超える練習環境を与え、
メダルを取れば家一軒、とか
国民平均をはるかに超える褒賞を与える。
今でもあるんだろうが、
代表的なのは、冷戦下の東側諸国だった。
例えば、東ドイツ。
1968メキシコオリンピックの
メダル獲得数。
東ドイツは5位。
(クリックで大きくなります。)
1972ミュンヘンオリンピックの
メダル獲得数。
東ドイツは、『開催国』の
西ドイツを抜いて3位
(これもおおきくなりますよ。)
東ドイツというのは、小さな国だった。
西ドイツと比べると面積で半分弱、人口は1/4くらいしかなかった。
統合直前の1990年の人口は約1600万人である。
日本人は一億2千万人以上いるのに。
しかも東ドイツの歴史は、
『国民が逃亡する歴史』だった。
マーシャルプランで、じゃぶじゃぶアメリカの資金が入った
西ドイツとは建国当初から経済力の差があり、しかも、
みんな共産党なんか大嫌いなので
53年には大規模な暴動が起こってソ連軍が鎮圧する。
この年だけで33万人が西に逃げ
その後も大体、年間15万人くらいが西ベルリン経由で
西ドイツに逃げた。
1959年から、農場や商店・企業の『集団化』という名前の
私有財産の召し上げが始まると逃亡者は急増。
60年には年間20万。61年に入ると月間3万、
61年8月は半月で5万人が東ベルリンから西ベルリンに逃げた。
業を煮やした東ドイツ政府が
ベルリンの壁の建設を始めたのは1961年8月13日から。
しかし、この時までに、
東ドイツ国民の1/4が西に逃げていた。
しかも逃げたのは、
生産年齢にあたる若年から壮年までの連中であり
この国は人口構成がめちゃくちゃになる。
東ドイツは長らくオリンピックに参加せず
1956年のメルボルン、1960年のローマと
壁建設直後の1964年の東京オリンピックには、
独自の選手団を送らなかった。(※)
三色旗の中央に五輪マークをあしらった
『東西ドイツ統一選手団』として出場する。
統一ドイツ・オリンピック旗
ガキの頃は、なんとなく美談として教わっていたが
統一選手団の間に、強化選手を養成していたらしい。
青壮年がいないということは、その時ばかりか
次の世代の選手層も薄くするはずだ。
しかし、東京オリンピックのあとの
メキシコオリンピックでは、
開催国メキシコはもとより、
西ドイツをも上回るメダルを取っていきなり5位だ。
その次のミュンヘンオリンピックでは
開催国の西ドイツを圧倒して3位だ。
これが『ステート・アマ』である。
いや、まあ東ドイツで組織的に
ドーピングが行われていたかどうかは知らない。
もちろん、やっていた人はいた。
『お国や薬のおかげで勝てた。』ということを強調すると
当時のメダリストの人に怒られるだろう。
しかし、幼い頃から
徹底的な選別とエリート教育が行われていたのも事実だ。
ドーピングに関して
いまよりも、はるかに『甘い時代』だったということもある。
1956年のメルボルンオリンピック以前は競技直後の検査さえなく
メキシコオリンピック以前には
ドーピングによるメダルの剥奪の事例はない。
そもそも、
薬くらいで、人間そんなに変わるもんかいな、とも思う。
いや、ちがうな。
自らを省みると、
『薬が人間を変える。』というのは
事実かも知れない、と思うのです。
人間やめたい…
では、『今日の東京オリンピック。』
1964年の東京オリンピック開会式。
先頭のギリシアと、開催国の日本以外は
英語綴りのアルファベット順。
ドイツはDじゃなくて、Gのところで出てきます。
やっぱりイタリアの女の子、かわいいなあ。
おなじく閉会式。
これの入場行進は、ちょっと感動した。
思いっきりエンドロールまで入っているから
ひやひやするけどな。
※ 同じ『敗戦国』でも、西ドイツと日本は
1952年のヘルシンキ大会から参加している。
イタリアはムッソリーニを追い出して、一応『戦勝国』側に回ったため
1948年のロンドン大会から参加している。
東欧諸国の一部はロンドン、ソ連はヘルシンキから参加しているので
政治的が理由があるにしても、あーめんどくせえ。
明日から、いつもの愉快な『なつやすみ』に戻ります。
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