『建国記念の日』と『建国記念日』
2月11日は『建国記念の日』。
実を言うと今の今まで『建国記念日』だと思ってました。
しかし、正式名称には『の』、が入る。
この日は『紀元節』と言って、戦前にも祝日だった。
戦後、祝日として復活するにあたって
『戦前の国家主義への逆行だ。』ということで
社会党を中心に国会で大反対が起こった。
そこで『この日に建国された、ってことじゃなくて、
日本って国が建国された事実を祝おうじゃねえか。』という、
大人って汚いなあ、という屁理屈のために
『建国記念』と『日』との間に『の』の字が入った。
従って、この日は戦前の紀元節を継承するものでは
ありませんぞ、というのが日本国の一応の立場なんだけど
『紀元節』がもとなので、大切な国家記念日である。
『あら、月曜日が休みで三連休ね。
ハッピーマンデーっていいわねえ。』とか
思っている奴がいるかもしれないが、
違うっ。
たまたま今年が月曜日だっただけだっ。
『成人の日』や『海の日』や『体育の日』のように
土日にひっつくためにふらふら動くようなふやけた記念日とは、
格が違うのである。
で、
この日に何があったかというと、今から2673年前、
神武天皇が即位された日、だそうです。
そんな古い事ようわかるなあ、というと日本書紀に
『辛酉年春正月庚辰朔 天皇即帝位於橿原宮是歳爲天皇元年』
という記述がある。つまり
『辛酉の年、春分あたりの正月朔の日に、天皇が奈良の
橿原宮で即位されたので、この年を「天皇元年」と為す。』
ということ。
明治以前は太陰暦だから日付と季節がずれてくるし
そもそも暦法が時代によって違う。
それならば、と日本書紀成立以前で
干支『辛酉(かのととり)』になる年のうち、
立春の頃の『庚辰(かのえたつ)』の日に
正月の朔(一日=新月)が来る年はいつかいな、ということを
丹念に数えた人が明治時代の初めにいた。
それは紀元前660年であり、この年こそ『天皇元年』であって
その『庚辰』の日付は現在の暦では2月11日である。
という気が遠くなるような計算をもとにしているんだそうです。
ふわあ…
日本書紀に記されるような古代のことはよくわからないので
Wikipediaさんにでも聞いてください。(紀元節)
それなら、
世界の『建国記念日はどうなんじゃろ。』と思うと、
こんなことになっているらしい。
こういったことを調べるのにはWikipediaって便利だねえ。
かつて植民地だった国は、
内戦の挙句、独立を勝ち取ったり、
独立するから戦争でもなんでもしてやるぜっという宣言をしたり
敗戦や革命で宗主国がぶっ倒れて独立できたり、
そんな日が記念日になっている。
アメリカのインディペンデンス・デイは、
植民地13州の代表者が集まった大陸会議で
『独立宣言』が採択された日。
福沢諭吉先生が訳しているので読んでみてください。
独立ノ檄文 青空文庫)
諭吉先生に『檄文』と言わしめるくらいだから、
内容は結構激烈である。
『人民を目的となして強奪を欲しいままにし
悪俗を改めんずしば…政府を廃却するは人の通義なり。』
『英国王の行いを論ずれば不仁残酷の他に記すべきものなく…』
以下具体的に英国王の暴虐を訴え、
イギリスが大兵を送って来たから戦うぞ、と。
『天の人を生ずるは億兆皆同一轍にして…』
生命自由幸福を自分で守るのは『人の通義』つまり権利であって、
『職掌』また義務でもある。
だから『合衆諸州は…理をもって独立し、
英国と交を断ち、英国の支配を受けず』と。
独立宣言である、ということは
『イギリス王に対する宣戦布告』でもあるという訳ですな。
連邦や連合国家はそれが出来上がった日が
建国記念日だったりする。
ドイツは、ベルリンの壁が崩れて、
1990年に東ドイツ諸州がドイツ連邦共和国に編入された
ドイツ再統一の日が記念日。
別々の国だったタンガニーカとザンジバルが合邦した
タンザニアでは、『統合記念日』と
タンガニーカの『独立記念日』と
ザンジバルの『革命記念日』の、3つがなかよく祝日である。
不思議なのがチェコで、第一次大戦の後
『チェコスロバキア』として独立宣言をした日が
現在でも独立記念日なのだ。
もう、そんな国ないのに。
逆に、連邦から離脱した日を記念日にしている国もある。
マレーシアから分離したシンガポールや、
ロシアやウクライナといった旧ソ連諸国なんかがそう。
カナダや、南アフリカ、ボツワナのように
イギリス連邦内で自治権を得て
『独立国に昇格した日』を記念日にしている国もある。
それなら、植民地を支配していた国はどうだ。
フランスは、フランス革命のバスチーユ襲撃の7月14日。
革命翌年の記念式典が『建国記念日』と呼ばれているそうな。
今も、この日にはパリ祭というのが行われている。
イギリスは、祝日としては存在していない。
さすがやのう、と思ったらWikipediaには
『聖ジョージの日がナショナルホリデーだ。』と書いてある。
日本だと『サン・ジョルディの日』と言ったほうが
通じるかも知れない。
『4月23日のサン・ジョルディの日には
恋人に本を贈ろう。』なんていう本屋のキャンペーンが
何年か前にあったでしょう。
日本では『子ども読書の日』でもある。
で、
イギリスの建国と本屋の策謀とは何の関係もなく、
サン・ジョルディこと、聖ゲオルギオス(英語訓みでジョージ)は
古代ローマ時代の殉教者。
ドラゴンを退治した、という伝説が残っている。
まだ遠いな。
聖ゲオルギオスこと聖ジョージは
イングランドの守護聖人なのだ。
あ、やっと届いた。
しかし、建国とは関係がないような…
しかも、あくまで『イングランドの守護聖人』で
スコットランドやウェールズ、アイルランドとは関係がない。
だから国としての祝日ではないそうです。
ちなみに日本の守護聖人はザビエルさん。
『歩くアメダス』
とかいって馬鹿にしたら
守ってやらないぞ。
守ってくれるのはありがたいけど、
人物に由来するなら、やっぱり日本人の方がいいな。
神武天皇に由来することに異論がある人は確かにいるだろうが、
だから『の』が入ってるんだ、という屁理屈はもういいか。
まあ、今日は『日本ができてよかったね。』という日、
ということで。
そう思える国にしてくれよ…
では、『今日の一枚。』
イギリスの国旗、ユニオンジャックの中には
『聖ジョージの十字』と呼ばれる十字架が入っています。
イングランドの旗になっている白地に赤十字がそれですね。
(クリックしてくださいな)
| 固定リンク
« 逆噴射の日 | トップページ | 不発弾とみぞれの日 »
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 戦後日本が相手をしたテロ集団たち。(2015.12.14)
- もう、あとは違憲立法審査だ。(2015.09.19)
- オリジナルって何だ?(2015.08.16)
- 安倍談話と村山談話(2015.08.15)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
ただの餓鬼大将だったジンムくんが
2600年以上も君臨していたのだから
気楽な話であります
それも身内同士で殺し合ったり、
あほちゃうやろか、もこれまた歴史です
世が世ならこんな発言で
私は殺されているのでしょうね
だいじょうぶ、息を殺して暮らしております
投稿: FREUDE | 2013年2月12日 (火) 15時52分
FREUDEさん、ありがとうございます。
神武天皇は160歳以上まで生きたそうです。
日本でも、ヨーロッパでも権力と権威の分離
ってのがだいたい同じ時期に起きてるんですよね。むー
投稿: natsu | 2013年2月16日 (土) 23時28分