『主権』回復の日の意味
4月28日は『サンフランシスコ講和条約』発効の日。
1952年のこの日をもって、日本は米英仏などとの
戦争状態を終了。国際社会に復帰した。
『日本と仲直りしてやるよ。』という
仲良しな国はWikipediaにあるように48ヶ国。
この中には、
当時でさえ独立の実質があったのか怪しい国があり
仏領ベトナムのように今日は存在していない国もある。
へー、ブラジルやルクセンブルグとも戦争をしていたのか、
と思ってしまうが、こんなにたくさんと喧嘩したら負けるよな。
それはともかく、この条約の締結国には
有力な交戦国だった、中国やソ連がいない。
西側諸国だけに対する『単独講和』を企図する政府と、
中ソを含む『全面講和』を主張する野党が,だいぶもめたのだが
首相の吉田茂が『単独講和』で押し切った。
中華民国のほうの中国とはサンフランシスコ条約と同じ日に
日華平和条約を調印。(発効は8月5日)。
ソ連とは、1956年の日ソ共同宣言で戦争終了。
中共のほうの中国とは1972年の国交回復で戦争終了。
日ソ共同宣言では、
『ソヴィエト社会主義共和国連邦は、
日本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、
歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。
ただし、これらの諸島は、
日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が
締結された後に現実に引き渡されるものとする。 』とあるので
ソ連は、『4島一括』ではないにしろ、
領土問題の存在と返還の意思を示しているわけです。
色丹島で学生に『色丹はロシア領。』という教育をしてるなんて、
とんでもない嘘つきですね。(朝日の記事)
日中共同宣言では、領土問題については
何一つ触れていない。
そのかわり、こんな一節がある。
『両政府は、右の諸原則及び国際連合憲章の原則に基づき、
日本国及び中国が、相互の関係において、
すべての紛争を平和的手段により解決し、
武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する。』
コーストガードや海軍の軍艦や
大量の空軍機を侵入させて
威嚇しているのは一体誰だ?
ちなみに、
韓国は、日本と戦争をしていたわけではないので
サンフランシスコ講和会議には呼ばれてもいません。
さて、今回の主権回復式典に
沖縄の知事が欠席したことでもわかるように、
『サンフランシスコ講和条約で、沖縄は捨てられた』
という思いが沖縄人には強い。
実際、本土が復帰しても、沖縄は1972年まで
アメリカの統治下に置かれ、現在も広大な基地がある。
ところが、戦後すぐのアメリカは、もっと過激なことを考えていて、
『北緯29度以南の地域(沖縄、奄美、小笠原)を
国連の信託統治領としてアメリカが占領し、
将来、アメリカの影響下で独立させてしまおう、と。』
国土の一部を勝手に処分されるのも腹が立つが、
『北緯○○度線』とかいう、
適当な国境線を引くから
ベトナムでも朝鮮半島でも
大騒ぎになったんじゃないのか?
朝鮮戦争前の国境線。
スパンと北緯38度
こんな人為的な国境線が持つか。
北緯29度線が人為的だった証拠に、
奄美群島は鹿児島県で、小笠原諸島は東京都だ。
対日講和交渉は、1950年の11月にアメリカが
『対日講和7原則』を示してから公式のものになる。
名指しで指定された、沖縄、奄美では大騒ぎになる。
『俺たちは切り離されるのか?』と
(小笠原では日本系住民は退去させられていた。)
沖縄とともに各地の『復帰要求』は盛んで、
奄美群島では『本土復帰の請願』に99.8%の島民が署名した。
しかし、1952年に調印された成文の中に、
アメリカが信託統治を狙っていたことがはっきり書いてある。
第三条 日本国は、北緯二十九度以南の南西諸島
(琉球諸島及び大東諸島を含む。)、孀婦岩の南の南方諸島
(小笠原群島、西之島及び火山列島を含む。)並びに
沖の鳥島及び南鳥島を
合衆国を唯一の施政権者とする
信託統治制度の下におくこととする
国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。
このような提案が行われ且つ可決されるまで、
合衆国は、領水を含むこれらの諸島の領域及び住民に対して、
行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を
行使する権利を有するものとする。
ごめん、これのどこが『潜在主権を認めた』ことに
なるんだろうか?
そもそも『信託統治』自体、将来的に独立させることが前提で、
戦後この制度が実施された11の地域は
現在、建前上は独立している。
伊領ソマリランド(現在のソマリア南東部)のように、
とても独立国と言えない地域もあるが。
実際、1946年、アメリカは奄美、沖縄に選挙で選んだ
知事を置き建前上の『民政』を敷こうとした。
ところが選挙をしてみたら本土復帰派の知事が
圧勝してしまい、事実上の軍政に逆戻りする。
『沖縄は我が国の一部だ。』なんて
血迷ったことを言ってる国があるが、
日本人を舐めちゃいけない。
いや、ちがうな。
ヤマトンチュー以上に日本人になりたかったのが
沖縄の人たちだ。
沖縄最北端の辺戸岬では
本土復帰を願って毎年のろしを上げた。
奄美群島の本土復帰は1953年。
小笠原諸島は1968年。
沖縄返還は1972年。
では、『今日の一枚。』
米軍占領地域に対する日本の潜在主権に関して、
昭和天皇がGHQに
『主権があることは認めてくれよな』
といわれたという話は有名。
マッカーサーにもしゃべったかも知れないが、
記録の形で残っているのがこれ。
宮内庁の寺崎英成が伝えた
昭和天皇の内意を
マッカーサーに報告する
GHQ政治顧問シーボルトの
1947年9月の文書
(クリックで大きくなります)
(英文)
Mr. Hidenari Terasaki, an adviser to the Emperor,
called by appointment for the purpose of conveying to me
the Emperor's ideas concerning the future of Okinawa.
Mr. Terasaki stated that the Emperor hopes that
the United States will continue the military occupation
of Okinawa and other islands of the Ryukyus.
In the Emperor's opinion,
such occupation would benefit the United States
and also provide protection for Japan.
The Emperor feels that such a move
would meet with wide spread approval
among the Japanese people
who fear not only the menace of Russia,
but after the Occupation has ended,
the growth of rightist and leftist groups
which might give rise to an "incident"which Russia could use
as a basis for interfering internally in Japan.
The Emperor further feels that United States military occupation
of Okinwa (and sucht other islands may be required)
should be based upon the fiction of a long-term lease
--25 to 50 years or more--with sovereignty
retained in Japan.
According to the Emperor,
this method of occupation would convince the Japanese people
that the United States has no permanent designs
on the Ryukyu Islands, and other nations,
particularly Soviet Russia and China,would there
by be stopped from demanding similar rights.
As to procedure, Mr. Terasaki felt that the acquisition of
"military base rights"
(of Okinawa and other islands in the Ryukyus) should be
by bilateral treaty between the United States and Japan
rather than form part of the Allied peace treaty with Japan.
The latter method, according to Mr. Terasaki, would savor
too much of a dictated peace and might in the future
endanger the sympathetic understanding of the Japanese people.
(抄訳)
天皇の御用掛(adviserと訳されている)である寺崎英成氏が
沖縄の将来を含む天皇の考え(ideas)を伝えるという任務を帯びて
やってきた。
寺崎氏曰く、天皇はアメリカにおける沖縄と琉球諸島(※)の
軍事占領の継続を望んでいる。
『占領』が終了した時点で、ロシアを恐れる日本人が
国内に政治的な事件(incident)を引き起こし
ロシアにつけ込まれる危険がある。
天皇は、アメリカによる軍事占領
(25年から50年、あるいはそれ以上の長期)は
『日本の潜在的主権が維持されている』、という
仮構(fiction)の上に立つべきだ、という。
天皇によれば、この方法は日本国民に対し、
アメリカが琉球諸島に対して永続的な支配像(permanent designs )
を持つものではなく、他の国、特にソ連や中国に対して
決して同様の権利を与えるものではない、
ということを納得させることになるだろう。
……(訳文以上)
しかし、『人間宣言』をした後の昭和天皇が
『占領の継続の希望』や『それをやめた時の政治的混乱』
さらには『ソ連や中国の脅威』といった、
踏み込んだ政治的な発言をするだろうか?
『寺崎英成』なる人物の個人的見解や解釈を
相当に混ぜ込んである文章だと思う。
そもそも、陛下に対して『His Majesty』は付けないわ
定冠詞の『the』は小文字だわ、
てめえ日本舐めてんだろう。
と思うが、報告者であるシーボルトという人の見解も
相当に入っているんだろう。
しかし、昭和帝が『沖縄復帰』を願っておられたのは事実だ。
返還後40年以上経っても、沖縄はまだ怒っています。
(クリックしてくださいな)
※この当時のアメリカは奄美群島まで含んで『琉球諸島』だと思っていた。
占領すんなら、歴史くらい調べて来いよな。
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投稿: Demaemiainycugz | 2013年5月22日 (水) 18時33分