釣りはいらねえ-1円Suicaの嘘-
JR東日本が、来年の消費税8%導入を見越して
Suicaの利用者に限って
1円単位での料金を徴収できるようにする、というニュース。
『切符のほうが割高になる訳ですか。』
『逆だ。1円Suicaのほうが割高になる。』
『なんで?』
『券売機が対応できないため、切符での料金は
従来通り10円単位とするからだ。』
『JRの運賃は原則として距離に比例する。』
『ええ。』
『ところが、中途半端な距離で152.3円とかだったら、
10円以下は切り捨てだ。』
『150円になる、と。』
『そのイメージがこのグラフだ。』
『でも、実際には
10円ごとに料金が変わるわけでもないですよ?』
『そりゃ、駅間距離によっては二駅でも差が10円以下
というところはあるし、逆に長いから
30円刻みくらいで料金を刻んでいるところがある。』
『しかし、原則はこういうふに、10円を超えないうちに
値上げをしていく、と。』
『これがいままでの料金体系のイメージだ。
現実の問題として、5円、1円まで扱わせたら
改札係が大変だ、という話もあった。』
『じゃあ、今回のニュースは?』
『SuikaなんかのICカードの普及で
1円単位の精算が出来るようになった。』
『消費税が導入された時、
国鉄の運賃は20円単位で一斉に値上がりしましたからね。』
『それよりは親切でしょう、というわけだ。』
『まあ、そうかな。』
『でもな?』
『あ。ろくでもないことかな?』
『これは実質的な値上げだぜ?』
『でも。値上げはしないから、
この「1円Suica」をやらせてくれってんでしょう。
「すっきり精算。釣りはいらねえぜ、って。」』
『阿呆、グラフをよく見ろ、段々で上がっていく切符運賃と
直線的にあがっていく「距離比例運賃」との間にある
三角形の部分は
JRの取り分になるんだっ。』
『あっ。』
『だから、切符を10枚買って、Suicaでうろうろしている
ばあさんとかに売りつけたら大儲けだ。』
『いきなりそういうこと言うのは止めましょうよ。』
『むかしは、大阪の地下鉄の切符売り場には
10枚分の値段で11枚売っている回数券を
ばら売りしているばあさんがいたぜ。』
『まあ、ね。』
『プリペイドカードの普及や、定期券のIC化で、
あのばあさんは消えたが
再びあの時代がやってくるっ。』
『…来ないですよ。
いまでもJR東日本管内の利用者の
8割はSuicaを使ってるらしいじゃないですか。
いまどき切符買ってるのはあんたくらいですよ。』
『だって、自営だから通勤しないし。』
『とにかく、これは実質的な値上げだ。』
『あまり実感がわきませんが。』
『となり駅と10円違う駅まで通勤しているやつは
10円近く毎日余計に払わされていることになる。』
『あっ。』
『10円でも往復で月500円だ。
30円も繰り上がる駅の手前までだったら
月、2千円近いぞ?』
『そう考えると腹が立ってきました。』
『表だった値上げはしないつもりだろう。
「消費税に耐えてるあたしってけなげ」くらいのことは
言いかねない。』
『しかし、実際は値上げだ、と。』
『うんっ。』
『それにな。』
『はあ…』
『Suicaにはデポジットってもんがあるだろう。』
『そういえば、申し込みの時に2000円くらい払わされますね。』
『あのうちの500円がデポジットと言って、いわば「預かり金」だ
転勤とかで、その区間の定期が要らなくなったら
返納すれば返して貰える。』
『ああ、そうなんだ。手数料かと思ってました。』
『そういう人、多いと思うけど…
とにかくJRはデポジットの金を寝かせておけるわけだ。』
『寝かせても利益は出ないでしょう。』
『昔でいう都市銀行の定期預金の金利が0.02%くらいだ。。
500円なら0.1円くらいになる。』
『すくなっ。』
『利用者からしたらそうさ。
だけど、JR東の利用者の8割がSuicaを使ってるんだろう。
軽く見積もって1千万人だとしたら、
金利だけで100億円だ。』
『あっ。』
『まあ、「預かり金」っていう性格上、元本に手を付けるような
投資は出来ないだろうが、
実際はもっと有利な運用をしてるだろう。』
『なんか腹が立ってきました。』
『そういうことを秘密にして
「ほらSuicaで精算すれば、
きめ細かく精算できて釣りもいらないよ」
って、そんなことだけ強調する。』
『うーん』
『卑怯だろ?』
『……』
『このニュースを見てこんなふうに
脊髄反射みたいに即座に、
怒り出せるやつなんて、そうはいないぜ?』
『ほんっとにへそ曲がりですねー。』
では、『今日の一枚。』
『昔の切符は硬券っていって、厚紙だった。』
『いまは切符も磁気記録式ですもんね。』
『しかし、そういうのにノスタルジーを感じる人もいる。』
国鉄の初乗り運賃が
130円だった時代。
『130円っていまより高いですよね。』
「でも、この昭和54年の刻印ってのは
俺がちょうどこの駅を使ってた頃なんだ。』
『わかったから泣かないでください。』
『うわあん。』
『リバイバル切符もありますよ。』
『業平橋って、いまは「とうきょうスカイツリー駅」じゃないですか?』
『それで、「消えゆく駅名」を記念して
こういう切符が出されたらしい。』
『あ、日付の23は、「平成年号」ですか?』
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