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2013年5月 3日 (金)

色がちがうっ。

長崎市が、市役所別館の外壁色が市の景観計画に違反する、

として130万円掛けて塗り直した、というニュース。

(朝日新聞の記事へのリンク)

 

 

 

塗色を指示した主査は減給1/10という結構きつい懲戒を受け、

『塗り直し代』も請求される見込み、であるという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何が悪かったのか、というと

朝日や読売の記事では『色が明るすぎた。』とある。

産経の記事では『茶色が悪かった。』とある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

では、どれほど素っ頓狂な色だったのか、

ご覧いただきましょう。 

 

 

 

 

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茶色、かなあ?

 

 

 

  

 

 

べつにいいんじゃないの?

 

このくらい。

 

 

 

 

 

もちろん、褒めるような色ではないが、どちらかというと、

右側の『薄わさびみどり』のほうが

センスを疑う。

 

 

写真だからよくわからないが、そんなに『明るい』かなあ?

『当初の予定を勝手に変更した』、というが

元はどんな色だったんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、

 

それならどんな建物が、市の建築としてふさわしいのか?

こんなのはどうだ?

 

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さて、

この建物はなんでしょう。 

 

 

 

 

 

正解は、大阪市の舞洲という埋め立て地にある

ゴミ処理工場。

 

  

 

 

 

 

こんな素っ頓狂な建物、

さぞや朝日新聞は怒っているかと思ったら

『派手に誘惑 これぞ大阪』ときた。

 

  

 

 

とんだダブルスタンダ-ドである。

 

 

 

まあ、記事は『オリンピック誘致を目指して、こんな建物を建てた。

オリンピックは来なかったけど、観光客は来る。さて将来は。』

という具合で必ずしも、万歳一色ではないのだが、

長崎ではだめで大阪ならいい、というのも

なんだか馬鹿にされたような話だ。

 

 

 

 

 

 

  

 

長崎の景観条例や計画の詳細はよく知らないが、

こういう規則は日本中にある。

  

 

 

阪神間の都市など、日本一厳しいんじゃないだろうか?

 

 

 

 

それこそ、着色したパース(透視図)を出せ、と来る。

そんな金ねえよ、と思って

『いやあ、まだ詳細が未定ですから。』なんて言うと、

それなら立面図に着色してマンセル値を書けなんていう。

  

書いてもいいけど、てめえそれ理解できねえだろ?

こっちも書けないけどさ。

とか思って、もにょもにょしていると、

日塗工の色見本を貼ってもいい、とかいう。

            

 

要するに何だっていいんだな、と思っても

そこはまあ、舞洲のゴミ工場をデザインした

フンデルトヴァッサーのような大先生ではないので

結局は無難な色を選んじゃうんだけどな。

 

 

  

 

 

 

しかし、色だけではなく、デザインにしても

こんな建物を見せられると何が正解なんだろう、という気はする。

           

心配しなくても、そんな仕事の依頼はないからいいんだけど。

 

  

 

くすん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

では、『今日の一枚。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この問題を解くヒントが、

この建物にあるような気がする。  

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明治6年、というから我が母校と同じ年に開校した旧開智学校。 

一体これは何だ?というと小学校。 

長野県松本市にある。

 

         

明治5年の学制発布によって、

日本中で『おらが街でも学校を作るだ。』という気運が高まる。

松本で、その任を預けられたのが立石清重という大工さん。

 

          

立石棟梁、

『小学校を作れ。しかも洋風の超かっこいいやつな。』

とか言われてもそんなの作ったことがない。

作るばかりか見たこともない。

 

  

仕方なく横浜に見学に行った。

ところが、その当時横浜にあったのも、

洋風とも和風とも判じかねる擬洋風建築というやつで

まじめな立石棟梁は、松本にそのお手本のような

この建物を造った。

  

実際明治初期に作られた多くの擬洋風建築が、

その後、建て替えられたり、火事にあったり、

震災や戦災にあったり藤原鎌足して喪われたのに、

奇跡のように美しい姿で生き残ったこの建物は

国の重要文化財になっている。

 

  

しかも棟梁、まじめに横浜の擬洋風を移植しただけではなく

途中でノって来ちゃったらしく、

中央に車寄せがあるのは まあ洋風だとしても、

その柱の間に本来あるはずがない貫を通して欄間を作り、

二匹の龍を闘わせる。

  

車寄せの上がバルコニー、というのは

三島由起夫が演説をした

市ヶ谷の旧参謀本部でも同じなのだが

立石棟梁、その手摺に雲を舞わせている。

 

 

さらにその上には屋根はいらないってのに、

棟梁、どうもお寺かお城のイメージが抜けなかったらしく

唐破風の屋根を架ける。

 

 

 

 

そして破風の下、懸魚の部分に

『開智学校』の銘板を掛けるのはともかく、

それを持っているのはエンジェルだ。

 

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てっぺんにあるのは八角形の塔屋

これも和風というかお寺風というか 

(クリックで大きくして、

ひょっとこなディテールをどうぞ)

 

 

  

 

そして、このすっとこどっこいな建物が罵倒されたのか?

というと、とんでもなく

喝采で迎えられた。

  

いまも松本市民の誇りである。

 

             

 

 

だから、こういう建物のデザインのコツ、というのは

気合い、だと思う。

 

 

   

立石棟梁にしたって、図面を引いて、

出資者である有力町民たちに

了解を取るくらいのことはしただろう。

 

 

彼がどんなキャラクターの人だったのか知るよしもない。

 

 

         

口角、泡を飛ばして、とうとうと論じ立てたのか、

『お横浜ではザンスね』と知識をひけらかしたのか

そんな嫌みなやつじゃなく、物静かに図面だけ差し出し、

周りから『横浜帰りが言うんなら、これが「世界」なのか。』

と思わせるだけの人格者だったのか。

 

 

 

 

 

いずれにしても『信念』があっただろう。

 

 

この長崎市役所の主査が

『色がおかしいんじゃないのか?』と注意されても、

『いやあ、いまから変えたら業者の手間がかかりますから。』

と、のらりくらりと言い訳をした、というあたりと

そこが違う。

 

 

まあ、信念があって変な色を塗られて、

まことちゃんハウスのようになってしまっても困るが…

 

 

 

 

 

 

しかし、気合いですよ。たぶん。

 

 

自信がないのは依頼がないからさ。

大丈夫、僕も横浜に行くから。

 

 

 

 

 

くすん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三島由起夫の演説を伝えるニュース映像。 

 

 

 

『諸君の中に一人でも、俺と一緒に立つ奴はいないのか?』

 

(罵声:「降りてこーい」 )

 

『一人もいないんだな……』

 

 

 

 

 

 

 

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