東京ゴミ戦争の日。
9月27日は、都内の生ゴミを引き受けさせ
られていた江東区が、杉並区の生ゴミ収集車の
搬入を実力で阻止した日。
1971年のこと。
都内全域の生ごみの7割、日量5000トンのごみ
というから、 毎日パッカー車数千台が、
隅田川を越えてやってくる。
尋常な分量じゃないと思うのだが、それを
夢の島にそのまま捨てさせられていた
江東区ではハエは大発生するは、
ネズミは出るは、塵はひどいは
メタンガスで火事は起きるは、
交通事故は起きるは、犬は鳴くは
『ええ加減にせえよ』という状態が続いていた
夢の島。
文字通りスモーキーマウンテン
江東区は 都内23区に
『ごみの自前での焼却処分』と
その施設の建設を求めていたのに対して
(焼却灰は受け入れる)
杉並区だけは、
高井戸地区の焼却施設新設計画が
住民らの反対によって頓挫・膠着。
(あえて『ら』と書いているのは、明らかに住民以外の
運動家が多数いたから)
あれこれ言い訳をいいながら
生ゴミの搬入を続ける杉並区に対し
業を煮やした江東区が実力行使に出て、
杉並からのごみ収集車を引き返させたのが、
この日。
ゴミ処分場、というのは
NIMBY施設の典型である。
つまりうちの近所には来るな、と。
NIMBYとは『Not In My Back Yard』の略。
俺の背中に立つな、というゴルゴな話である。
実際『環境意識の高い』高井戸の住民の
皆さんも
都が設定した懇談会への出席を拒んだり
仮設のゴミ仮置場の建設現場に殴りこんだり
焼却施設の住民説明会に殴りこんだり、
徹底的に抵抗した。
いま、経緯を読み返してみても
杉並区など生ごみに埋もれてしまえ,
と思うが
『公害施設を住宅街に作ったらダメでしょう。
夢の島でいいじゃん。
え?俺わがままじゃないよね?』という
『意識の高い三多摩の住民の皆さん』の
意に反して、江東区の実力行使は
全地球のアプローズを受けることになる。
逆に、追い返された生ごみによって
杉並区民はハエにまみれることとなった
冒頭に、Wikipediaと朝日新聞の
二つのリンクを張ったのだが
ニュアンスの違いがわかってもらえるだろうか
朝日の記事にある、
『元東京都職員の作家・童門冬二さん』のお話
…江東区のうったえは正当なものでした。
それにもかかわらず、
長年都市問題として位置づけられていなかった
都民の意識が低いのはもちろん、庁内でも
ごみ問題は軽んじられる傾向にありました。
清掃局は他の部局に比べ、
低い立場に置かれているという風潮が
ありました。
というのは江東区民に対して、
何のエクスキューズにもならないだろう。
清掃局の人間の扱いが低いのは
都庁に限ったことではないが
あくまで役所内部の話で 外部の人間には
どうでもいい。
ましてや江東区や杉並区の住民には
言い訳にさえならない。
予定地近くでガソリンスタンドを営んでいた
田澤敏夫さんのお話。
「高井戸駅や小学校の前という一番いい場所。
ここに造るというのは
とんでもないことです」
とふりかえる。
運動に加わった内藤昇さんは
「工場を造らなければいけないということは
総論では賛成だった。
ただ公害が騒がれていた時代で、
行政の言うまま施設ができるのは不安でした」
と言う。
という
『総論賛成。でも近所には来るな』
ってのは『地域エゴ』の極致だよな。
『うちの市のごみを
金を出して、よその市に焼いて貰うなんて
無駄だ。』 と放言して、
周辺市の総スカンを食らって
ごみの収集ができなくなり
お詫び行脚をした挙句 結局は辞職して、
なんとか納めてもらった、という事例がある。
まあ、『公害施設は来るなよ』っていう
気持ちはわからんでもないけどね。
しかし私なんかは公害まっ盛りを生きてきた
世代だ。
晴れたら、
『ああ今日は光化学スモッグ注意報日和だな』
と思い 、
学校帰りに野良犬と遊んで、
その手で駄菓子屋のに並ぶ添加物満載の
毒々しいお菓子を貪り食っていたのだ。
だから今の子はひ弱だ、と言うつもりはない。
アレルギーの種類がすごく増えたのには驚くが
それで死んじゃう人がいるんだから
悪くいってはいけないんだろう。
それでも、今は少子化のせいか
ゴミとか環境とかに
神経質過ぎやしないだろうか。
それはきれいな環境で子供を育てたいだろう。
苦労して高井戸に家を買ったのに
ゴミ処分場ができるなんて
聞いてなーいって、言いたい気持ちもわかる。
しかし、ゴミ焼却場の都市計画決定は
1966年である。
(計画自体は戦前の1939年以前にあった。
焼却場の完成は、この後もしばらくもめて
1982年。)
文句を言うなら区役所ではなく、
ましてや江東区ではなく
あなたに『安いでっせ』と吹き込んで
土地と家を売った不動産業者だろう。
土地建物を買う前には区役所に行こうよ。
都市計画決定されていれば道路も都市施設も、
その位置は、すべて無料で閲覧できる。
事業計画が公告されてから
騒ぎを大きくして全国に恥をさらすのは
もう、やめようぜ。
そんな事をしているのであれば
あなたの家の不動産価値を下げてるのは
きっと、あなた自身だと思うよ?
そして、
ゴミ処分場であろうとなんだろうと、街には
『嫌だけど必要』という施設が幾つもある 。
そういった施設の側も都市環境に負荷を
かけない努力をすることが必要だけど、
住民のほうも受け入れる度量を持とうぜ。
『保育所なんかうるさいじゃない』
『児相とか作られたら離婚したDV親父が
そこら辺をうろつくでしょ?』
『都市計画道路を拡幅したらどんぐりの森が
なくなっちゃう』
『うちの街のゴミは夢の島に捨てればいいよ』
なんていうのは、もう いいよ。
いまの街は『東京ゴミ戦争』の時代の意識を
超克できたのだろうか。
では、『今日の二枚。』
『ゴミ戦争』の最前線。
割と原始的な方法で
『搬入拒否』をやってたんだな、と思う。
杉並清掃工場の煙突は高さ160m。
住宅街のすぐそばにそびえる
=東京都杉並区
と、まあ、リンクした朝日の写真に
こんな眠たいキャプションが書いてある。
煙突が高いのは、むしろ公害の防止策だ。
背が高ければ排煙を拡散できる。
なんでそんな当たり前のことがわからないんだ?
これで煙突が銭湯みたいに高さ16mだったら、
『あらヒューマンスケールで素敵ね』とか
言うのか?
馬鹿。
そして『ごみ戦争』まで起こして、
やっと作られたこの施設も
築30年を超えて老朽化し、
後継施設をどうしよう
ということになっているらしい。
どうするんだ?
杉並区は金持ちだから、
札束で横っ面をひっぱたいて
ナウルあたりの貧乏国に生ごみを引き取らせるか?
まあ、米軍基地にしても原発にしても
同じような議論はある。
『そもそも必要か?』という議論がある原発は
ともかく基地にしろ、ごみ処分施設にしても
絶対に必要なのだ。
『必要なのはわかるけど、
何もうちの近所じゃなくても。』
という三多摩根性では
およそ『どんぐりの森』の連中と変わらない。
ふう…
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