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2014年7月23日 (水)

街の優劣

 
政府が、『過疎地域の集落機能を維持するため、 

複数の集落を一つのまとまりにして活性化する 

「集落ネットワーク」のモデル事業に取り組む方針を固めた。』 

というニュース。読売新聞の記事へのリンク)











なんのこっちゃ、というと。

『中心となる「基幹集落」に商店など地域のサービス拠点を集約し、

周辺集落の住民の交通手段を確保する。』

『事業では、過疎地域内の複数の「周辺集落」のうち、

中心になる集落を「基幹集落」と位置づけ、商店やガソリンスタンド、

高齢者福祉や健康づくりのサービス拠点など

日常生活に不可欠な機能を集約化させる。』




ガソリンスタンドが、『サービス拠点』かよ、という気はする。




しかし、この『方針』、とやらの気持もわからんではない。


これから少子化の時代、崩壊していく地域社会に 

金なんかかけらんねえぞ。 

公共投資を集中しよう、集落にヒエラルキーをつけよう 

ってのは理屈としては、わかる。




ということを前提として、 

このへそ曲がり日記のつぶやきを聞いてやってください。




というのも、




『街区にヒエラルキーをつけよう。』ということで 

大失敗した巨大住宅地があるから。




千里ニュータウンだ。








千里ニュータウンというのは、 

大阪府の北部に作られた計画人口15万人の巨大人工都市。

(この人口が満たされることはなかったが。)


成長する大阪の、郊外住宅地として、 

多摩とともに、日本初の『ニュータウン』として 作られた。

町開きは1962年(昭和37年)。


これからいちいち日本の年号を併記するけど、

昭和37年、というのは日本にはまだ高速道路もない。


千里ニュータウンっていうのは、 

『車社会』を前提にした、近隣住区理論をベースにしている。




近隣住区論というのは、 

半径400mくらいの住宅地を『近隣住区』として、 

その中でコミュニティが完結できるように、 

住区の中心にコミュニティセンターや小学校、公園、

そして、商店街を配置しよう、というもの。


そんときゃ、車は邪魔だ。

近隣住区の中には『通過交通』を許さねえ、ってんで

道を曲げて、ボンエルフって、

行き止まりにして、クルドサックって、

車は入れないようにしようぜ、というもの。



アメリカのC・I・ペリーというおっさんが 

1924年(大正13年)に唱えた。


へ―…


大正13年って、あんた

日本にまだ国産乗用車がないんですぞ?


日本初の乗用車、トヨAA型の生産開始が

1936年(昭和11年)だ。(トヨ自動車へのリンク)



やだなあ、アメリカ人。

そんな時代に『歩車分離』とか、『歩行圏内でのコミュニティ』とか

言ってんじゃねえよ。









1960年代に開発された、千里ニュータウンは 

この近隣住区論を、忠実に取り入れた。


15万都市を、12の『近隣住区』に分け、それぞれの中心に

『近隣センター』と、2つの『地区センター』を設ける。

そして、『千里中央』は、文字通り『ニュータウンの中央』、として

ここには、役所の分署などが置かれた。

もっとも吹田市と豊中市にまたがっているため、

『市役所が二つある。』。


この街の成立の経緯を話そうと思ったら、

ああ、そこ障子閉めな、話が長くなるから。

なんで黒い地区があるんだ、周辺だって…

という話は、離れすぎだ。


とりあえず、ぐだぐだな境界線の、

このニュータウンの絵図だけ掲げておこうか。

                                                                   

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それでも千里中央はペデストリアンデッキに

つながった商店街、とか1960年代の未来を実現した。


ここには、日本の建築界の本気が集中し

ペデストリアンデッキの北端には

槙文彦先生の千里センタービルがあり

そこに並んで、村野藤吾先生の南地区センタービルなんて

傑作があった。



どちらもいまはない。

                                     
                     

          

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千里センタービル(槙文彦)

               

                                                                                                                                                                                              
                                            

          
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南地区センタービル(村野藤吾)

 











千里中央のことはひとまず置いておいて 

近隣センターについて話します。


さっきも書いたっけ、半径400mくらい、小学校区に相当する

『近隣住区』のなかに、もちろん小学校、公園を作る。

商店街、肉屋魚屋八百屋、床屋本屋、各科の個人医院まである。

日本らしいのは銭湯があったことで10ヶ所の近隣センターには

銭湯があった。

千里ニュータウンの初期の物件には風呂がなかったんですね。


最後まで残っていた銭湯は藤白台だったか、津雲台だったか、 

千里ニュータウンの建物、っていうのは、 

楽しんで建てたんだろうなあ、というのが伝わってくる。


もちろん、スラブの厚み、とかクォリティとしては最低に近いが

脱衣場から浴場まで中庭があり、そこに入ると

ぱあっと天井が高くて、よかった。



ところが、これがユニットバスが登場すると、お父さんが

バルコニーにユニットバスを乗せるといった暴挙に及び

ついには、公団も、『一部屋+UB』という増築を認める。                           

そもそもそんなことがなくても、マイカーの時代になれば

みんなで大きな銭湯に行けるのであった。

 

いい銭湯だったけどなあ。

あのへん、銭湯ないのよ。

いくらなんでも、製図室のベビーベッドで4連泊もしたら

風呂にも入りたいじゃないか。















しまった、だから商店街だ。

商店街、と言ってもごく小規模だ。


個人商店が十数店に、ミニスーパーがあったりしたが、

これが、あっさりと滅んだ。


なんでだよ、ペリー先生の教えによれば

近隣のみんなは、ここで買い物して、

子供もここで遊んでみんなハッピー。

と言うはずではなかったのか?






日本人なめちゃいけない。







まず、個人商店だが、

これが、『近隣センターごとに1業種・1店舗』なのである。

地権者の肉屋の隣に、激安で仕入れが一括の『肉の○○』が

出店してはいけないのである。

半径400mの商圏が独占なのだ。

当然、競争がないから値段が高くなる。


千里の近隣センターは、『千里価格』ということで

週刊誌にもからかわれた。

さらに、ここの近隣センターに入っていたのは、 

ニュータウン開発で、

土地と商店を等価交換で入居していた 百姓だった。

商売なんかしたことがなかったんですね。


こいつらが横柄に『千里値段』で、

悪い肉を売る野菜を売る魚を売る、しかも高い、品ぞろえが悪い。

『いいんだよ?気に入らなかったら買わなくてもいいんだよ?』



買わなくなった。



にわか百姓店主は、隣の近隣センターまで片道 800m。

どうせ、俺のところに戻ってくるんだろ?と

舐めきってかかっていたら、千里ニュータウンに入居したのは 

当時のインテリの皆さんだったのである。




なんだ?てめえ、この百姓






ということで、近隣センターは、こうなった。

                        
              

                

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見事な廃墟。

高価な近隣センターを嫌った住民は

1960年代にはバスで、70年代に入ると自家用車で 

ニュータウン近縁部にある、スーパーに出かけた。



『近隣センターの敗北』を、

店主の個性のせいにしているように見えるだろうが、それは違う。

もちろん圧倒的多数はいい人だったと思う。


しかし地域独占であったことが、センターの商品の価格を高くし

『近隣センターの個人商店、という規模の中途半端さが

品ぞろえを悪くした。これは事実だ。


住民は自前の車が持てると郊外のスーパーに行った。

『日本におけるモータリセーションが

千里の近隣センターを滅ぼした』みたいなことがいわれる。

                                                                                    

だけどこれはおかしな話で、ペリー先生の近隣住区論は

大正13年の時点で、

来るべきモータリゼーションを予測していたはずだ。




千里は、『日本人はそこまで車を持つまい』

という読みにおいてで甘かったんだろうな。








しかし近隣センターだ。

当然商売がたちいかなくなって、滅んだ。


しかし、千里の『近隣センター』の店舗に関しては

前にも言ったように 地権者との権利交換で

『分譲』だったんですね。

だから、権利の整理がややこしい。

最後まで百姓ともめた。



いまでは10の近隣センターは建て替えられて、

新しいテナントや、今日話題の保育所も入っているが、

決定的に時期が遅れた。









千里ニュータウン、というのは批判も多いが
 

よく考えられたプランだと思う。

そしてプランナーが楽しかったんだろうなあ、 

ということもよくわかる。


失敗ももちろんあって、お風呂の件もそうだけど

駐車場の確保率を2割くらいしか見込んでいなかったので

マイカーが増えると、

緑地を引っぺがして駐車場を作らないといけなかった。








しかし、入居者のほうもいけなかった。 

千里ニュータウンの住宅は、みんな2DKだと思っているだろう。

実際には、1DKから5DKまでバリエーションがあった。


なんでそんなことをするか、というと

バリエーションのある家族構成、2人暮らしの初老の夫婦もいれば

新婚で小さい子がいる、あら、奥さん2人目?

そんな家庭もあれば、大学生から中学生くらいの子がいて、

『なあ、母さん定年になったらフルムーンパスで旅行でも。』

なんて風に、人数も世代もバリエーションをつけたかったんですよ。

                                       

ところが狙い通りにはならなくて、 

すべての家に新婚が雪崩れ込んできた。





モノクラスの団地を作るのは危険だ。

一斉にガキを孕む、保育所に行く、小学校に行く、中学校に行く。

ここら辺の施設を作るのは『ニュータウンの責任』なのだ。

そして嵐がすぎたら、しょんぼりして過疎校になる。

それで高校を卒業したら、就職したり、進学したりして

やつらは親元を離れてしまう。

結婚すれば戻ってくるか?というと、来ないでしょう。




千里は一気に高齢化し、人口が減少した。




いまでは、近隣センターはみんな建て替えられているけど

いくらなんでも時期が遅れた。

いまはどうしているんだろう、というと、こうなっている。

(ニュータウンの変容と都市再生への課題)














で、

あまりに背景の違う、千里の事例は過疎地域と 

関係はないだろう、と言うかもしれない。


でも、過疎地域の『主要産業』は、林業でも農業でもなく、

金額的には、基幹地区から周辺地区への道路工事などの

公共工事であり、

周辺地区の民宿の最大の顧客は工事の作業員なのだよ。


ここら辺の事実は、直視しようぜ。

既にいま、周辺集落は公共工事という

カンフル剤がないと生きられない。


田舎に行けば最大の産業が『公共工事』というところは

いくらでもあり、『選択と集中』をやられると

人口の減少よりもあっさりと滅ぶ集落がいくらでもある。


それは、もちろん健康じゃあない。

じゃぶじゃぶと公共投資を垂れ流してきたからこんなことになった。

しかし、撤退も名誉だ。

でもなあ…よそもんがいうことじゃないしなあ…





今日の話に結論なんかありません。





でも、人為的に街にヒエラルキーを作る、ってのは

無理があるんじゃないかな、と思った次第であります。









『平成のケ号作戦』は、

どこにいくのかと思うのです。





























では、『今日の一枚。』













千里センタービルのエントランスと階段室ロビー。

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かっこいいなあ。





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