ヒトラーの贈り物
1945年の第二次大戦末期にナチスドイツが保有していた
240億円相当の金塊を積んだ列車が、ポーランド西部の
ヴァウブジフ市近郊の廃トンネルで見つかった、というニュース。
(ビジネスニュースラインの記事へのリンク)
ヴァウブジフ市というのはここ。
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ポーランド-チェコ国境にほど近い場所にあるが
ここは戦前はシレジアといって、生粋のドイツ領であった。
ところが、1945年5月に終末を迎える欧州戦線においては
2月までにソ連軍が占領していた。
引用した記事に書いていないのでわからないのだが
問題は、この列車が、どこに行こうとしていたのか?
ということ。
『ナチスの財宝』と聞くと、ドイツ第三帝国の崩壊を見越しての
財宝の隠匿か?』と考えるのが自然だが、
ソ連領に向けて走っていたとすると訳がわからない。
それなら、逆にこの列車はポーランドから西へ、
つまり、ドイツに向けて占領地の財宝を運んでいたのか?
とも考えられる。
5月7日にドイツが降伏した時、
組織的な軍隊として存続していたのは、
南ドイツとチェコの一部に存在していた陸軍と、
ヒトラーが後継者に指名したデーニッツの海軍しかなかったから、
再起を期してのものだったら、こっちのほうがリアリティはある。
実際のナチス残党の行方は
どうだったのか?
かつてドイツを支配したナチス党員と心酔者たちの一部は
親枢軸のペロン大統領が独裁していたアルゼンチンに逃げた。
大物では『ホロコーストの指導者』アドルフ・アイヒマンなどがいる。
小物では、政権から追われたムッソリーニを空挺部隊で
グラン・サッソから救い出し、アルデンヌの大攻勢で
連合軍の背後に回り込んで、偽装の軍服や流暢な英語で
混乱させまくった、オットー・スコルツェニーなどがいる。
もちろん、それ以外にも組織的にナチスの残党はアルゼンチンに
流れ込んでいて、こんな遺跡がある。
(ハフィントンポストの記事へのリンク)
ヒトラーがアルゼンチンに潜んでいる、という与太話は
かなり長く欧米で信じられていた。
アルゼンチンで撮影されたヒトラー
とされる写真。
もちろん簡単に亡命できない人がいて
1970年代には『近所にナチスの残党がごろごろいる。』
という状況が、ドイツではむしろ常識で、
その中には政治家になった人もいた。
有名なのは、国連の事務総長まで務めた、クルト・ワルトハイム。
この人は戦前、ドイツ領であったオーストリアの出身で
SSの下級組織で将校にまで進級していたのだが
国連勤務を経て1970年代に2期続けて国連の事務総長。
『敵国条項』って一体何だ?
これを土産に母国のオーストリアの大統領になろうとしたら
ナチスの前歴がばれて大騒ぎ。
それでも国民は『外国からなんか言われるのは、うるせえや。』と
ワルトハイムを支持するが
外国は『ペルソナ・ノン・グラータ』扱いをしたので
外遊に行けなかった。
例によって話が長くってごめん。
要するに『240億円の財宝はすごいけど
結局ナチスの残党は
それを活かせなかった。』
ということ。
第二次大戦の『隠し財宝』として、
日本で有名なのが、フィリピン防衛戦を指揮した
山下将軍が隠していた『M資金』というもの。
どのくらいの資産で具体的にどんな代物だったか、ということを
飛び越えて、この『資金』が有名なのは
戦後、これの名を騙った『詐欺事件』が群がり起きたから。
曰く、
『出所は旧軍の山下将軍であり、、その金額は数百億円に及ぶ。
私の知り合いが、その所在をつかんだのだが
今の政治状況では、無傷で日本に持ち帰るのは難しい。
そこで社会的信用のあるあなたに、是非協力をお願いしたい。
まずは、運動資金としていくらか頂戴できないか?』
と、持ちかけて、金を貰うとドロン。
こんな詐欺にひっかかる奴おるんかなあ、と思うが
『あなただけに秘密のお話しを』といわれると、
ころころん、とだまされる奴がいたらしい。
ざまあ。
『M資金詐欺』は初出の昭和30年から今日に至るまで
40年間、連綿として受け続けられており
本当にそんな資金があるのなら、
金利だけで3倍以上になっている。
狙われたのが『社会的信用がある金持ち』なので
被害者が世間に知られることを恐れ、
ディテールが伝わらなかった、ということもあるらしい。
日本にはもう、こんな話はないんだろうな。
最後の戦争は70年前に終わってるし。
そもそも、『トレジャーハンター』という
職業が存在することに驚いた。
今回、『ナチスの財宝』を発見したトレジャーハンターは
財宝の価値の10%を要求しているそうで
記事を信じるなら24億円。
いいな。
もし、満額貰えるんなら、
それはそれでうらやましいけど、実際には
70年間にわたって『発見の努力』は
無為に費やされてきたわけである。
もしも、あなたの息子が、進路調査票の希望欄に
『トレジャーハンター』って書いていたら、
許せますか?
できねー。
では、『今日のヒルター。』
まあ、モンティ・パイソンだから
あんまり真剣に考えるのは野暮だけど
(クリックしてくださいな)
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