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2015年10月27日 (火)

見えないところが深い

『傾斜マンション問題』。

(産経新聞の記事へのリンク)









2007年に竣工した

横浜市内の12階・705戸の大型分譲マンション。

事業主は三井不動産と明豊エンタープライズ。

設計・施工は三井住友建設。

杭工事の施工が旭化成建材。

4棟にわかれた住棟のうちのひとつが沈下して 

EXP.Jのところで約2cmの段差が出来た。



このことが、今月から

ニュースに大きく取り上げられるようになった

原因は、基礎に打ち込まれた杭の長さ不足。

支持層まで届いていなかった。


杭長が足りなかった理由は、

施工時のボーリング調査で、

深さ14mと見込んでいた支持地盤の一部に

不陸があり2mほど深いところがあった、

というもの。

傾斜を起こした棟では、52本の杭のうち

6本の長さが不足し、

2本にも根入れ不足があったのだそうだ。

(ケンプラッツの記事へのリンク)

今回用いられた杭の工法。 

旭化成の『ダイナウィング工法』

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で、


原因については、あとでまた戻ってくるが

販売元の三井不動産レジデンシャルは、

『全棟建て替え、建替工事費、移転費用の負担。

賠償金支払い』を提示しているんだそうな。

(毎日新聞の記事へのリンク)




全戸に補償をする、ということを一応評価する

報道もある。

10年前に起こった構造計算書偽装問題では、

弱小ディベロッパー、ヒューザーは

跡形もなく吹っ飛んで倒産した。

おかげで、被害を受けたマンションの中には、

住民が工事費を負担して建て替えたりした。


この事件で執行猶予つきの甘い判決を喰らった

オジャマモン小嶋進が『傾斜マンション問題』

について、生意気になにか語っている。

(ライブドアニュースの記事へのリンク)

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こいつは天下晴れて無罪ではなくて

絶賛執行猶予中

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こいつは、たった5年の刑期を終えて

すでに出所しているはずだが…


今回の事件にしても、三井不動産までは

つぶれないだろうが、旭化成建材なんかは

吹き飛んでしまうような気がする。



なんで全戸買収にしないんだろう。





福知山線脱線事故で電車が激突したマンションは

1年半かけてJRが買収した。

あとに残ったマンションを

モニュメントにする計画が進んでいるが、

こんなふうに原形をとどめなくするようなことが

考えられるのも、全戸の権利を買い取ったからだ。

(使えよ! なつやすみ)

しかし、こうやって住民の区分所有権を残した

ままにすると、建て替えにしても4/5の同意が

必要になって、おそらく先に進まない。

再販したところで完売する自信がない、

ということだろうか。


むー。








責任についてはどうなのか。というと

いま責められているのは工事の施工業者である

旭化成建材の現場責任者。

現場にあって杭長が足りないことに気づきながら

そのまま施工した。

そして地盤データの改ざんや流用もやっていた。

ということで責任を問われている。


もちろん、その責任は逃れようがないが、

そもそも長さの足りない杭を指定、発注したのは

元請けの三井住友建設であったはずだ。

だから下請けの旭化成建材の現場責任者に、 

1ヶ月以上の工期の遅延を賭けてまで 

杭を破却、再発注させるのは酷ではないのか? 

という話もある。


購入者は引っ越し、転校の予定を立てているから 

『引き渡し期限が延びる』ということになると 

現場責任者はもとより、杭打ちの下請けごときでは 

責任は取れないのだ。

社長から『性格的にルーズで』って

いわれちゃうんだから、この人に

サラリーマンとしての未来はないだろうが

この現場責任者や旭化成建材の責任だけでは、

当然収まるまい。



そして、やっと本題。

『この問題はどこまで広がるのか?』

ということ。



EXP.Jで躯体がずれていることに気づいた時、

販売主の三井不動産レジデンシャルは、

『東日本大震災のせいっすよー』と、

無視しようとした。

これが、杭長の不足による言い逃れの出来ない

施工ミスだ、ということが発覚した時も

下請けの杭施工業者の旭化成建材は

『杭打ちした現場監督がルーズな奴で。』

と、問題を矮小化しようとした。

疑念があるのは、このだらしない男が監督した

41物件だけだ、と。

もちろん世論はそんな眠たい言い訳を許さず、

国交省は旭化成建材が施工した3000余の物件

について、親会社の旭化成に対して

住民に情報を開示することを求めた。

(FNNニュースの記事へのリンク)



客の立場で考えれば、 

現場監督の個性によって杭の長さが

足りなかったら堪らない。

しかし中途半端に土建屋の世界を知っているから

だらしのない個性が、とんでもない手抜きを

起こすことも知ってはいる。

そうはいっても、そんな問題じゃないだろう。

このだらしない監督が担当した他の物件の

いくつかも、そして、旭化成建材の3000件の

うちのいくつかも、

さらには、他社施工の物件の中にも

当然こういった問題はあるはずだ。



今回の問題が発覚したのは、

建物のEXP.Jで、ずれが起きたから。



大型の建物の場合、建物が折れ曲がる部分や

長すぎる場合に、わざと躯体を切る。


地震が起きた時に

変に応力が集中して破壊しないようにするためで、

建物の柱、梁、地中梁、さらには

廊下や屋根のスラブも縁を切って間を開ける。

これを、EXP.J(エクスパンションジョイント)

という。


ただ、床に隙間が空いていたら危ないし、

屋根に隙間が空いていたら雨が漏るので

金属のカバーをつける。

今回の問題が発覚した時、テレビのリポーターが

『あ、見てください。

あの金属のカバーの左右で段差がっ。』

叫んでいたのがこれだ。



今回建物が傾斜したのは、支持層に届かなった杭が

EXP.Jのそばに集中していたからだ。

だから建物が不同沈下しEXP.Jで縁を切られて

いたから、つかまりどころがなくて傾斜した。

ということは、建物の真ん中らへんに

長さの足りない杭があった場合、

建物が頑張って被害が露見しない場合

あり得るということだ。




そして、さらに根本的な原因。




杭工事、といってもいろいろな工法があり

今回の『ダイナウィング工法』だけではない。

むしろ、掘削機で支持層を探りながら杭を打設する、

という工法はあまり一般的ではないように思う。

これなら確かに杭ごとに支持層が確認できるが

基礎の全数について、事前にボーリングをして

いなかった。


これを『手抜き』のように報じる向きもあるが

それはさすがに酷だと思う。

50本の杭が必要だとしても、

1棟あたり数カ所のボーリングで済ませるのが

いままでの慣習だっただろう。

今回の事件を教訓に、

これからは、基礎のすべての箇所について

ボーリングをするのが当たり前になるのかも

知れないが過去に遡って、

その責を問うのはあんまりだ。



掘削機の先端のドリルの電流の変化を見る、

とか、そんなぎりぎりの設計・施工方法を

採ったからじゃないのか?

地盤の傾斜、不陸を見込んで、多少長めの杭を

余裕を持って、地盤にぶち込むのではいけないのか?





マンションの施工単価は、新国立競技場が

工費がかかりすぎてつぶれたように、

いま、急激に上昇している。

その一方、マンションの販売は首都圏を中心に好調で

その結果、このマンションのように

『工費も工程もぎりぎり』という物件が

量産されていくことになる。




だから、今回の問題は、

『だらしない現場監督』の所為じゃなく

もう少し構造的なものだと思いますよ。




もちろん、この監督を許すつもりはないけど。




















では、『今日の一枚。』

買う時は夢があったんだよなあ

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このマンションの中古物件を仲介するサイト

精一杯夢をあおっているのが、今となっては物哀しい。










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