大晦日ラプソディ
『えいらっしゃいらっしゃいらっしゃいらっしゃい…』
『あぅ。だめだだめだだめだだめだ秀坊。
おめぇの声ぁ上品すぎんだよう。』
『はあ…』
『いいかい?見てろぉ?
らっしゃいらっしゃいらっしゃい
まぐろだまぐろだまぐろだまぐろだぁ
今日ぁ大晦日だぁ。
あしたっから市場ぁ休みだ。
全部もってけ。
やすいよやすいよやすいよやすいよ。 』
『さすがおやっさん、見事な河岸声です。』
『だろぉ?今日はおめえ大晦日だぜ?ここにもテレビ局が来て
「年の瀬で賑わうアメちゃん横丁、なんつって
カメラが来るんだよぉ。』
『ええ、去年の中継で、おやっさんの見事な河岸声に惚れました。』
『だろぉ?この声があるから、必ずカメラが映してくれる、
インタビュウしてくれんだよぉ。
俺ら魚屋の年に一度の晴れ舞台だぜ。』
『はい。』
『わかったら、やってみろい。』
『んんん、らっしゃいらっしゃいらっしゃい
まぐろだまぐろだまぐろだまぐろだぁ
今日ぁ大晦日だぁ。
あしたっから市場ぁ休みだ。
全部もってけ。
やすいよやすいよやすいよやすいよ』
『待て待て待て。どぉして手前はそぉ上品になっちまうかなあ…』
『はあ…』
『飲め。』
『なんすか?これ。酒でも飲んで勢い付けろ、と?』
『いや、硫酸。』
『ええっ?』
『てめえみてぇな、お上品な声は声帯にヤスリかけなっくっちゃあ
俺みてえになれねえんだよう。』
『や、でも硫酸はちょっと…』
『大丈夫、薄くしてあるから。』
『いやいやいや、硫酸は塩酸と違って揮発しないから
喉から肛門まで、たんぱく質を溶かしながら流れてくんすよ?』
『おう。キサントプロテイン反応で、まっ黄色なうんこが出るぜ。』
『よく知ってますね、そんな懐かしい単語。』
『おう、おれぁ学のある魚屋だからよ。』
『年に一度のテレビ中継ために、硫酸を飲むのはちょっと…』
『いいから飲めっ。』
『やだよー…』
『和尚様、今年の除夜の鐘ですが。』
『いいよ、もう。』
『なんでそんな投げやりな。』
『こんな貧乏寺に来る人いないもん。
参詣に来た人に撞いてもらうって広告を出しても誰も来ないから
108発俺が撞いたんだぞ?』
『最後のほうはへろへろでしたよね。』
『そうさ、三が日寝込んだぜ。』
『はあ…』
『もうやだよ…』
『そこでですね。絶対に参詣客が増える鐘撞きってのを
考えたんですよ。』
『「客」ってのはどうも…』
『まあ一度撞いてみてください。』
『ほう、もう準備しとるのか…』
『見ててください。撞きますよ。』
ごわん…
『おっ、撞木からなんか出てきたぞ。』
『なんて書いてあります?』
『…えーと、大吉…』
『ね、これは鐘を撞くとおみくじが出る、
っていうプレミアな鐘撞きなんですっ。』
『ははあ…』
『絶対受けますよ。』
『でも、お前これ凶も入ってるんだろ?』
『もちろん。』
『じゃあ、だめじゃん。』
『大吉ばっかりじゃ信用されません。』
『そりゃそうだけど。せっかく除夜の鐘で厄を落としに来るのに…』
『だからいいんですよ。
年が明けたら凶の厄も落ちるって宣伝したら…』
『あ…』
『年末年始の旅行の企画も、出尽くした感じがあるな…』
『伊勢志摩で初日の出とサミットの宿、
納沙布岬で日本最初の初日の出…』
『それだよ。』
『はい?』
『日付変更線が陸地を通ってる場所はないか?』
『ははあ…しかしあれは、陸地を避けて通ってますから。』
『南極はどうだ?』
『あー、あそこは唯一、陸上に日付変更線が通りますねー。』
『だろ?どのへんだ?』
『アメリカのマクマード基地が一番近いです。』
『いいじゃねえか。あすこなら船でも飛行機でも行ける。』
『民間人はどうでしょう。』
『そいでな、日付変更線のすぐ西側まで行って正月を待つわけだ』
『はあ…』
『それで日付が変わったら、東側に移る。』
『はあ…』
『するてえと、二日にわたって元日を楽しめるって寸法だ。』
『楽しいですか?それ。』
『だから日付変更線の東西に
テーブル置いておせち料理並べとくんだよ』
『面白いかも知んないですけど、マクマード基地から180度線まで
200kmくらいあるんですよ?客なんか来ないですって。』
『じゃあじゃあじゃあ、日付変更線の東西で、
初日の出が二度楽しめる。』
『南極は今真夏だから陽が沈みません。』
『だから?』
『そもそも初日の出がないんですよっ』
『あ…』
では、『今日の三枚。』
羊たちが消えていく…
とっても前が見えません…
(クリックしてくださいな)
よしっ。来年は頑張ろう。
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