余命1年日記 -115- できることがない (5月第4週 2018.5.25)
- 最近の記録
5月 8日 K病院 本館233号室 入院
21日 K病院新館 2階
地域包括ケア病棟に転棟
22日 CT造影撮影
23日 F先生 回診 造影写真解説
25日 (いまここ)
あわただしい。
特に今週に入って いろんな事がありました。
順番に書いていこう。
まず21日、 病棟を変わりました。
以前もお世話になった地域包括ケア病棟。
この日の午前中に昼寝していると、
介護士が入ってきた。
『荷物をまとめて下さい』と言う。
なにも聞いてないし 寝起きだから不機嫌に
『あ゙?』と訊いたら、看護師が来た。
『11時に次が入るから すぐ移動して下さい』
だそうだ。
今回の入院はみんな冷たいな、と思いながら
『どこに行くのか』と訊くと
『新館2階』だという。
地域ケア病棟があるフロアだ。
今回の入院中にCT造影撮影をやることは
聞いていたから『一般病棟でなければ
検査は受けられないのでは?』と訊くと、
看護師は返事に詰まる。
最後にF先生が出てきた。
『受けられますよ、検査』
『でも、地域ケア病棟では 検査は・・・』
『まあ、そんな杓子定規な運用をしてる訳じゃ
なくて、実際は退院調整のベッドですから』
と、正直だ。
『233号室は窓が両側にあって、
せっかく気持ちのいいベッドだったのに・・』
『そんなことはどうでも・・・』
・・・今回の入院はスタッフも先生も冷たい。
『10時に来て11時に次の人が入るって
言うから驚きました』
『僕も驚きました』
『先生が決めたんじゃないんですか?』
『「いつでも移れます」とは病棟に
言ってありましたが』
そうか、患者をなんの病棟に入れるか
「一般病棟」か「地域ケア病棟」かという事は
ドクターが判断するのだが、
いつ何処に、という事柄は
病棟の師長が判断するのだ。
『あいつを早く一般病棟から出せ』という
「誰か」の意思が働いていたのかと心配した。
21日午後 2回目の精神科の診察。
三井のリハウスのCMに出てくる、俳優の
笹野高史そっくりのM先生と しばらく話す。
若干頼りない。
私が離婚していて、家にいるのはボケた父だけ
退院後は家族のフォローが期待できないので
大変である。ということくらい、
精神科の医者なら問診の前に家族票とかに、
目を通しておいて欲しい。
『へぇ離婚されてるんですか』とか言われると
ガッツリ疲れる。
信用もできなくなる。
顔が長い。
この先生に、退院後どうすべきかを聞いてみた
すると『退院しても外来でこうやって
僕のところまで来て 話をしてくれたら
入院まで必要だとは思いません』という。
ほう
ちなみに入院についてどのくらい知っているか
と訊くと、ほとんど知らないという。
23日にF先生に聞いても、同じだった。
『入院についてはよく知りませんが、
まっさらな状態での病状の変化を視たい』と。
汚染されている訳じゃないんだけど。
内科のF先生が知らないのはわかるが、
精神科のM先生が知らないとは。
K病院のように上品な患者が来る病院では、
依存症患者など診る機会がないのだろう。
医者であっても一般の人の『精神科の入院』に
関する知識は想像以上に乏しいようだ。
自助グループに通うのを復活させようと思う。
入院しても院内でやることは同じなのだ。
患者同士でミーティングする、時間が経つと
院外のミーティング場に行って参加する。
繰り返すが、時間がないから入院はしたくない。
かつて10年以上、阪神間のミーティング場を
回ったことを思うと気が重いが、
やってみるか。
M先生も、長い顔でこれを薦めた。
入院や自助グループについて
全然言葉が足りてないな。
ここの部分は、後で稿を改めて書き直します。
22日午後 CT造影検査。造影剤を点滴で注入。
「点滴」というから、造影剤を上から吊るして
滴らせるのかと思ったら、注射筒に入れた薬を
オペレーターの人がシリンダーを押し込んで
全力で注入していた。
一通り撮影が終わった後で、彼がしきりに掌を
揉んでいたから、ものすごい圧力が
必要だったらしい。
23日昼前 F先生回診。
造影検査のCT画像を見せてやる、
というので病棟のナースステーションの
パソコンを使い、モニターを見ながら話した。
造影検査というのは始めてだ。CTのX線を
遮るんだか吸収するんだかする造影剤が、
臓腑の隅々まで染み渡ったところを撮る。
すると、血管が白く見える。
血管が走る様子がみえる。肝臓、食道などの
臓器は毛細血管の塊なので、形なりにぼんやり
明るく見える。
『CTを撮ったら、いいところもありました』
へえ・・・。
『腹水がなくなりました』
本当だ。臍の下に分厚くあった腹水がない。
『あと、ガンがありません』
F先生の前に診て貰っていたK先生が、ガンに
ついてはかなり徹底的に調べてくれた。
見つからなかったから その事を言うと、
『でもK先生が診たのは5年前でしょう』
そんなにガンに罹りやすいですか。
『肝硬変はかなり高い率でガンを併発します』
・・・高い率。
『万が一いま罹っても、まあ・・・』
どちらが先か、のチキンレースということか・・・
『肝硬変がはっきりわかりますね』とF先生。
ぎょっとして画面を凝視すると、
『肝臓の表面が滑らかじゃなくて、カクカク
しているでしょう』言われてみるとそうだ。
肝臓の全周がカクカクしている。
『全部固まってるみたいなんですけど・・・』
『まあ、端から固まって行くわけでもないし』
生きている部分はどこだ?
解像度を上げれば、もっと細かく血管の走行が
見えるらしいが この程度のぼんやりさでも
肝臓の中央部に蛇のようにうねるひときわ太い
門脈が見える。
肝臓の右にいびつに潰れた 丸い食道が見える。
食道の回りに小さな丸がたくさんある。
肝臓に向かう門脈系の静脈である。
画面をスクロールして、体の断面を上下に
動かしてやると この静脈たちが食道の回りを
踊るように動きながら、現れては消えていく。
『この画面ではっきり見えるということは、
この辺の血管はみんな静脈瘤があります』
とF先生。
さらに内視鏡で撮った映像を見ながら
静脈瘤は食道よりも、噴門を入った
胃の入口に多い、と説明してくれた。
胃の中は内出血しているので、胃壁の表面が
鬱血して滲んで真っ赤だ。
食道にも胃にも静脈瘤がたくさんあることは
わかった。内出血もある。
どうしよう。
『実は、いまの時点では打つ手がないんです』
なに?
『静脈瘤がある血管がみんな細すぎるんです』
どういうことだ?
実は今回、入院を延長して
造影検査をしたのには理由があった。
『静脈瘤破裂をなんとかしよう』ということ。
端的に言うと、他にやることがないのである。
肝硬変の根治治療として、現在唯一可能な
肝臓移植は、生体肝、脳死肝いずれも
可能性がなくなった。
ショックだった。その後、
断酒の誓いを忘れるくらいには やさぐれた。
iPS細胞を使った再生医療というのは、
間に合いそうにない。STAPわぁ なかったし。
そうなると今できることは、
次々に現れる肝硬変の合併症、腹水や立ち眩み
静脈瘤破裂などに対処することである。
一昨年の夏 あれほど苦しみ 名医F先生をして
『このまま改善しなければ余命1年』と
言わしめた腹水は見事になくなった。
今回のCT画像を見ると、体の中心部には
多少残っているが 穿刺が届くくらいの
体表部からはなくなっている。
なぜだろう。
F先生も首を傾げていたから 正直な奴だな。
その割にウェストは90cm以上あるのだが、
こういう風にブクブク脂肪が付くのも、
肝硬変 の合併症だ。
皮膚が痒くて仕方がないので皮膚科から塗薬を
貰っているのだが、最近あまり効かない。
これも合併症。
しかし、こういうのは すぐに命に関わる訳では
ないので放置している。
立ち眩みも怖い。以前倒れて鼻を折った時から
基本的には何の改善もしていない。
今も上の血圧が100前後と若干低いが、これも
合併症で手の打ちようがないんだそうだ。
ふう
命に関わる肝硬変の合併症として、いま一番
問題なのは静脈瘤破裂である。
しかも今回、6Iに嫌われてしまったから、
奇数日に破裂してしまったら、命に関わる。
いつ破裂してもおかしくない静脈瘤をたくさん
育ててしまったことは私に責任があるが、
半月おきに破裂するのは、私の責任ではない。
酒のせいでもない。
冗談はともかく、こんなにしょちゅう
破裂されたら『「徐々に」体が衰える』のでは
なく急速に衰弱する。
使う方法で、ひとつは食道、胃などに内視鏡を
挿入し、静脈瘤の外側から硬化剤を注入する。
静脈瘤硬化療法(EIS)という。
もうひとつはゴムバンドで静脈瘤を結紮して
(けっさつ=縛って固定する)静脈に血栓性閉塞を起こし、
それによって出血を止めるもの。
静脈結紮術(EVL)という。
また、硬化剤の注入に際して
内視鏡を用いるのではなく 静脈にカテーテル
を挿入してレントゲンを見ながら操作し、
静脈の内側から硬化剤を注入する方法もある。
さらに、以前腹水を減らす方法として
下げるので、静脈瘤が出来ることや破裂する
ことを防ぐ効果が期待できる。
私に関しては いままで静脈瘤、となると
迷わずゴムバンドで結紮するEVLという方法を
採ってきた。
しかしこれだけ方法があるのだ。
EVL以外に適する方法はないか?ということで
まずは予備の調査として、
今回の造影検査をおこなった。
これで血管の走行を確かめ、破裂してないけど
危ない静脈瘤に硬化剤を注入する方法はないか
と考えた訳である。
F先生が。
だから、造影検査後 初めての今日の診察は、
選択肢がたくさんあるけどどれにしよう、
という うれしい悩みを相談されるものだと
思っていたら、
『今の時点では打つ手がない』だと。
どういうことか、と訊くと
『静脈瘤ができた血管がみんな細すぎる』
んだそうだ 。
これだけ細いと食道や胃にへばりついている
静脈瘤は扱いにくい。
つまり、硬化剤を注入したり
ゴムバンドで結紮するのがむずかしい。
食道の回りの静脈は捕まえるのも無理。
さらに静脈瘤ができた場所が悪い。
胃の中に静脈瘤があると、喉から内視鏡を
差し込んで、上から施術することができない。
静脈瘤を下から狙うために
胃の中で内視鏡を上に反転させることになる。
これも無理。
静脈瘤を結紮する場合も、血管が細く静脈瘤が
小さいので無理。胃の中も同じく困難。
腹部から針を刺して、血管にカテーテルを挿入
して、内部から硬化剤を注入する方法も
静脈瘤が小さすぎて無理。
また、肝臓を貫通してカテーテルを刺すことに
なるが、肝臓が負担に耐えられるかも問題。
TIPSやPSEは前にもH先生に言われたように
肝臓が弱りすぎていて無理。
直近の血液検査でChild Pughスコアが、
CからBに上がっていたが、
『まだまだ』なのだそうだ。
思い出しながら書き出しただけで
これだけある。
よくもまあ、うちの肝臓をここまで悪し様に
言いやがったな、と思うが 事実なのだろう。
『これでもう少し、静脈瘤が大きくなったら
施術できる箇所が多くなるんですが・・・』と
出来の悪い冗談を言う。
静脈瘤が小さいなら破裂しないだろう、と
単純に思うのだが、これでこのまま退院したら
また、ひと月経たずに破裂させてくるんだ。
何度も裏切られてきたじゃないか。
できることがない。
『退院しましょうか。』
『退院しますか?』
『できることがないんなら・・・』
『・・・』
『しかし座して死を待つ、
というのは悔しいな・・・』
『それなら・・・』
ということで最後にF先生が出してきた手が、
『降圧剤を服む』という方法だった。
静脈瘤破裂の原因は門脈圧の亢進。
血圧と門脈圧では意味が違うが、
血圧を下げる作用がある降圧剤を服めば、
門脈圧も下がるそうだ。
試してみますか?⁉️ということだ。
よういろんなこと考えよんな、と思うが、
他に方法がないなら試すしかない。
イワシの頭でもイモリの黒焼きでも試すさ。
『でも、血圧を下げて立ち眩みが酷くなったら
元も子もありません』
ということで、この週末は
『降圧剤を服んで立ち眩みは出るのか』
ということの実験を、自分の身体を使って
やっております。
具体的には薬を服んで寝ること、です。
とろとろと寝てばかりいます。
あまり血圧は下がりません。
上が100から120くらいです。
日大の監督は、いけないと思います。
ベッドから勢いよく起き上がると、もれなく
頭から血が引いて、視野が狭くなります。
栃ノ心に優勝して欲しいです。
ひまだ
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