俺たちの明日はどっちだ。
5月23日は映画『俺たちに明日はない。』のモデルとなった、
ボニー・アンド・クライドが殺害された日。
1967年と割と昔の映画なので、知らない人も多いと思う。
実際、この二人がやった犯罪というのは
それほどたいしたものではなくて強盗と殺人だ。
累計13人を殺した大量殺人者ではあるのだが
殺人に思想性がない、という点では
昨日紹介した津山30人殺しと同様に
すがすがしく馬鹿である。
いや、思想性のある殺人犯はもっと困るけど…
しかしこの人たちの犯行は派手だった。
マシンガンを持ったクライドが銀行に侵入、
ボニーは盗んだフォードV8で待機して、
一撃を終えると二人で逃走する。
当時のアメリカでは州境を越えてしまうと
警察の捜査が及ばない。
しかも、フォードV8は当時世界一大型の車だったから、
警察が追いつけるはずはなかった。
単純な強盗犯なのだが、彼らは意外に捕まらなかった。
州境を越えて捜査ができる連邦捜査局、いわゆる
FBIを作ったのはこの二人だ。
といわれたりする。
事件の痛快さと、
襲ったのが銀行や富裕な商店だったことから
一種の義賊のような扱いを受け、
マスコミ的には大人気だった。
この二人は、一時クライドの兄貴夫婦と一緒に行動する。
更に仲間が増えて
一種のギャング団のようなものを組織するのだが
人数が多くなると仲違いするのが集団の常。
兄貴のバックは射殺され、兄嫁も捕らえられる。
こいつが二人の行動についてしゃべり倒したために、
次第に追い詰められる。
しかも悪いことに、この二人組は、
警察官をショットガンでなぶり殺しにしていた。
警察というのは、身内に犠牲者が出ると
法律の許容範囲を超えて復讐に燃える。
彼らの『活動歴』は1932年3月から
翌年の夏まででしかなかったのだが
彼らを決定的に有名にしたのは、
その最期であろう。
怪我をしていたクライドのほうをかくまって
田舎に隠れていた二人だったが、その行動は
警察とFBIに筒抜けだった。
待ち伏せされていた二人は、恢復して移動しようとした時に
警官とレンジャー部隊の自動小銃で蜂の巣にされる。
さて、ボニーとクライドの写真。
1932年のものとされる写真。
美男美女とまでは言わないけど
まあそこそこ、という風情。
ただし、ボニーの身長が150cm
だったことを考えると
アメリカ人としてはどうか?
ボニーは、カフェのウェイトレスだった。
『お金がなかったら今度でいいよ。』というような
気っぷのいい姐ちゃんだったらしい。
クライドは少年時代から強盗を行う、犯罪常習者だった。
彼は、客としてボニーが勤めるレストランに来る。
惚れたのはボニーのほうだった。
しかも猛烈な片思いで、
読むのも恥ずかしくなるような詩を遺している。
住み慣れた家を出て 町へ行った
その目まぐるしい喧噪の中で遊ぶために
無情なところとも知らずに
町は田舎の少女を取り込んでいく
少女は甲斐性ある男に惚れ込んだ
チャイからやってきた殺し屋
死に物狂いで愛した男
男のためなら死んでもいい
盲目になったのは恋のせいか?
映画を見ると、この姉ちゃんも
ピストルやマシンガンをぶっ飛ばしていて
まともな人格ではないのだが、
一体何だろう。
では、『今日のボニーアンドクライド。』
この二人が殺害された直後の映像
というのが遺されている。
ボニーはハンドルを握りながら死に、
クライドは車外で横たわっている。
車に積まれていた武器、として
5丁の自動小銃と複数の拳銃が並べられているが
二人が携行する武器としては過剰ではなかろうか?
ここで、やっと映画『俺たちに明日はない。』
この映画、原題は単に『Bonnie and Clyde』というのだが
これに『俺たちに明日はない。』という邦題をつけた人は
誰なんだろう。
若干、説教くさいが、世界恐慌直後の狂騒と、
禁酒法時代急速に勢力を伸ばしてきた武装ギャング団。
といった世相を切り取っている。
そして何より、およそ計画性のないこの『逃走劇』に見る
二人の刹那的な生き方を示してはいる。
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