ロボットとAIとラッダイト運動。
政府が音頭を取って、
機能を絞る代わりに安価な介護ロボットの
普及を支援する、というニュース。
対象として想定しているのは
1)抱え上げ介護。
2)歩行補助
3)居室での排泄の補助。
4)認知症などの人の見守り、の4分野。
1台10万円程度になるよう、政府が
メーカーなどに補助を行い
介護保険の対象を拡げて月数百円で利用できる
ようにする。
日本のロボット技術は世界一である。
さらに、高齢化は進みその一方、介護従事者は
不足している。
この三つの状況を一気にアウフヘーベン
できたら一石三鳥だ。
さらに、経済成長も期待出来るから
一石四鳥じゃないか、と。
そうか?
というのが今日のお話。
『相変わらずへそ曲がりですねー。』
『この話題で「ロボット」っていう表現を
使うことがよくわかんないんだよな。』
『いきなりヒューマノイドは無理でも、
いままでとは比較にならない情報分析能力を
持ったAIや、分析の基礎とするための
データの集積なんかの中核技術は、
実用化の段階に来ていますよ。』
『抱き上げ介護ってことは、
お姫様だっこ?』
『座位から立ち上がる時に胴を抱えて
肩を貸すってやつじゃないですか?』
『・・・なんだ、詰まらない』
『非常時には抱き上げる事もあるでしょうが・・
いや 宣伝の為に、全面的に抱っこするのかも
知れないな・・・』
『どんなロボットになるんだろう?』
『お姫様だっこをするロボットって言えば
これでしょう。』
アトムとウラン
『いや、まあ、こういったヒューマノイド
(人間型)ロボットを
いずれは目指しているにしても、
いまの人間型ロボットはまだこんなもんだ。』
なぜ巨乳?
『何が出来るんですか?こいつ。』
『一応、二本脚で立つことが出来て、
音声認識で表情を作ったり簡単な仕草なら
出来るんだと。』
『何に使うんです?』
『いまの性能だと、「エンターテインメント
産業への応用が主な目的。ファッションショー
等への利用が期待される」といった
程度らしい。』
『エンターテイメント…』
『……』
『……』
『こんなもん、
まだダッ○ワイフだっ。』
『わーわーわーわーわー。』
『ヒューマノイドロボットとしては
ホンダのASIMOが有名ですが。』
『しかし、まさかASIMOを
介護保険で使えるようには出来ないだろう。』
『量産できる態勢になってないでしょうし。』
『そうはいっても、ASIMOの開発当初の
スローガンは「一家に一台ロボットを」
だったそうだ。』
『最初から、ファミリーユースを
目指していた、と。』
『ASIMOというと、二足歩行ばかりが
強調されるが最終的には、介護を受ける人と
コミュニケーションが取れて
介護ロボにする事が想定されてた筈だ』
『いまは、原発の事故処理とか。』
『フクシマの原発事故の後に、
「ASIMOを原発処理に使えませんか?」と
いう一般からの問い合わせがあって
ちゃんと答えてるんだよな。』
『そしてまだ、介護にも使えない。』
『そもそも高すぎるだろうし。』
『それで機能を限定して安く、というのが
今回のニュースなんですかね?』
『でもな?今回の補助対象じゃないが
入浴介助なんかに使う機械は相当古くから
開発されている。
大阪万博の時に三洋電機がこんな風呂を
出展したのを覚えてるか?』
人間洗濯機
シャワーが出て洗います
『これ、機械よりも化粧ばっちりで
一日中風呂に浸かってる
このお姉さんがすごいですよね。』
『俺も、こんな未来あるもんか、と
思ったけど、同じような機械は介護用品として
すでにあるんだ。』
これもシャワーが出ます。
『寝たまま入浴できたり、
車椅子ごと浴槽に入れたり…
いまの介護用の風呂はすごいですねえ。』
『風呂だけじゃないぞ。
徘徊防止のために、荷重で反応する
センサーシートなんてのも既にある。
GPSで追跡するケータイ、っていうのもある』
『まだまだ不足でしょうが…
介護ってのは重労働らしいじゃないですか。
あんたはこういう補助制度に
反対なんですか?』
『違うっ。』
『ひっ。』
『介護機器の開発のために税金を使うのも
保険の適用範囲を拡げるのも反対しないっ。
「それ1台でなんでもできる、という
イメージ」がある「ロボット」っていう
言葉を安易に使うのが許せないんだっ』
『また、へそ曲がりなことを…』
『でもな?人間洗濯機や徘徊防止のシートが
ロボットか?』
『そりゃまあ、イメージとは違いますが…』
『そういうツールを総合して運用できる
システムがあって
星新一のショートショートみたいな未来を
作れるんならともかく、
そうじゃないんだろ?』
『…うーん。』
『今回も、「アベノミクス」と同じで
「10万円介護ロボ」、とか「成長戦略の柱」
なんていう風に
キャッチフレーズだけが
先行している気がするんだよな』
では、『今日の一枚。』
『介護の分野は人手不足かも知れないが、
こうやって、ロボットが発達すると、
ただでさえ就職難の日本人が
「ロボットに職を奪われる」
という時代が来るかも知れん。』
『ロボットなら正確だし、ソフトによっては
将棋の名人に勝っちゃうし。
そんな時代が来るかも知れませんねえ。』
『産業革命が始まった頃、機械に
職を奪われる、ってことで、
職人や手工業者が紡績工場や織機工場を襲って
機械をぶちこわすラッダイト運動ってのが
起こった。』
織機を破壊する
職人たち
『あんまり頭の良さそうな壊し方じゃ
ないですね。』
『しかし、飛び杼の発明者ジョン・ケイは
故郷を追われ、ジェ二ー紡績機の発明者、
力織機の発明者カートライトの工場は襲われ、
いずれも発明者としての正当な成功の報酬を
得られなかったそうだ』
『一時的には機械を追い出すことに成功
したんですか?』
『そうとも言えるが言えない気もするし、
もちろん最終的には敗北した』
『職人たちどうなったんです?』
『折から進みつつあった産業革命の単純労働力
として吸収された』
『あ・・・』
『しかし、現代の日本でもAIによって人間の
食が奪われるなら、その時の経験が参考に
なるかもしれん。』
『ルーティンの単純労働はAIに任せて、
人間はもっとクリエイチブで高級なお仕事を
するようになる、とか・・・?』
『そんなことあるか。』
『でも産業革命の時は失業した手工業者を
吸収して余りある雇用が生まれましたけど
「AIの進化普及による雇用創出」なんて
そううまくいきませんよ?』
『む・・・』
『やっぱりAIの単純労働と、
人間のクリエイティブな創作活動との
住み分けによる共存です。』
『馬鹿野郎っ』
『ひっ』
『何がクリエイティブなお仕事なのかしらんが
そういう仕事に就いて、それで家族を養って
いるひとがどれだけいる?』
『まあ、親戚的には「ごくつぶし」ですね』
『それが如何にふざけた寝言か、ということが
ロボットとAIの時代になったら、嫌と言うほど
わかるだろう』
『ASIMOが実用化されたら
青山のホンダの本社も襲われるんでしょうか』
『ロボットによる大失業時代、なんて
安易な未来予想だなあ。』
『でも、ロボットはまだこれからいくらでも
進化していくのに、人間の伸び代はないし。』
『あ、そうだ。』
『なんです?』
『会社説明会に参加される方は
こちらですって言えば、すぐに裏切る
奴が出て分断できるさ。』
『ロボットと正面から戦う気はない訳ですね』
(クリックしてくださいな)
(初出 2013.4.30)
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