一級建築士製図試験物語(カド番になるまで)
友人の建築士は一級建築士の予備校の先生をやっている。
日曜に電話すると携帯につながらない。
忘れた時間にかかってきて、
『すまんすまん、授業でなあ』などという。
ああ、そうか。
そんな季節か。
あのへろへろになりながら受験した頃をちょっと
思い出した。
さて一級建築士になるには
真夏に行われる学科試験に合格し、
さらに10月中旬の製図試験にも通らないといけない。
いま受けても絶対に受からない自信があるし、
実際に長いことかかって取ったわけだが
今回は製図試験についてのよもやま話を
書きたいと思います。
受験生の皆さんに有益な情報は、
ほぼない、とおもいます。
よろしければどうぞ。
去年の日記で書いたが、私は学科試験で受かった年、
資格予備校に出した当日の合否判定で
『こらあかん』と思われたらしく
どこからもお呼びがかからなかった。
学科合格を知ったのは9月中旬に来た通知のはがきだった。
ありゃあと思ったが、大手予備校のコースは
すでに締め切っているところが多い。
試験まで1ヶ月、日曜4回のコースで20万というのがあったが
ちょっと考えてしまう。
せっかく金を払うのなら8月の課題発表直後から
ちゃんと通いたい。
マークシートで答案を記入させておきながら、
なぜ合格発表まで1ヶ月以上かかるのか?
手作業で採点してんじゃねえのか?
とおもうのだが、ぐずぐずしているうちに
4回コースの締め切りも過ぎてしまった。
受験だけで大金がかかる資格試験というのはどうなんだ?
と怒ってみても仕方がない。
予備校へ通うのは受験生の勝手だからだ。
しかし、それ以外にも金がかかる。
試験に携行していい品物の中に
『製図版、または平行定規』というのがある。
製図版はただの板。
平行定規は文字通り
水平に渡された定規が上下にスライドするもの。
これに三角定規を当てて製図する。
もちろん、受験要項に
それらをもってこいと書いてあるわけではない。
あくまで、『持ってきていいよ』というスタンスだ。
その証拠に答案用紙には
1cmの方眼が薄く印刷されている。
これで描けるでしょうというわけだ。
むかしは
三角定規だけで答案を描きあげる剛の者が
いたのかもしれないが、
許可されているのなら
いいアイテムを装備したいと思うのは
ドラクエ世代なら当然だ。
しかし東急ハンズに行ってみると
1台 2万5千円也と、結構なお値段がする。
買うのに躊躇するのはもちろんケチだからだが、
こんなもん買っても、
この試験以外に使い途がないせいもあった。
答案用紙のサイズはA2(新聞紙二つ折りの大きさ)。
A3では答案を描くのに小さく、A1では大きすぎるからだろう。
当時、まだ手書きで図面を書くことも多かったのだが
こんな中途半端なもの使えない。
大体、会社には備品のドラフターがある。
予備校から早々に『当確』を伝えられていた皆さんは
先輩から借りるなどして抜かりなく準備していたが
試験1ヶ月前に、突如合格を告げられた私は
東急ハンズのショウウィンドーの前で
固まるしかなかった。
いや、固まってないで買えよ。と今なら思うのだが、
私が買って帰ったのは、
木製の製図版とA2のT定規だった。
馬鹿である。
あのときの自分に会えるなら
『試験をなめるな』と怒鳴りつけてやりたい。
結局、その年は予備校に通わず
木製の製図版とT定規を抱えて試験に臨むことになった。
試験会場の大講堂で
ごそごそと木の製図版を取り出したのは私だけだった。
経験値レベル1、『ぬののふく』と『ひのきのぼう』で
ラスボスに挑むようなものである。
なにが『ドラクエ世代』か。
『ゆうじゃ』ですらない。
血迷ったスライム以下だ。
当然落ちた。
すべて自業自得だが、
こうして私は来年も失敗すれば
学科から受けなおさなければならない
『カド番建築士』となった。
そして
『来年はちゃんとしよう』と
頭の悪い子の通信簿に書かれるような
決意をしたのでありました。
次回予告
『落ちたのを道具のせいにしてんじゃねえぞ』
長っ。
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